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文字数 590文字

 BBは、徐々に構えを解いた。
 男は、それに合わせるように上げていた手を頭の位置からじりじりと下げていく。
 結局連行という形で決着がついたのだと真白は思った。が、嗄れ声が唐突にヒヒヒと笑った。

 さりげなく片手を後頭部に当てがって、差し出してきたのは短銃だった。
「イヒヒー! ミツバチ野郎め、油断したな。なぜ、オレがピストルを持っていないと思ったんだ?」
 真白の息が止まる。
「形勢逆転ってとこかな?」
 男は、もう一度嘲り笑った。

(そのままでは撃たれてしまう!)
「BBさん!」
 そう声を上げるも真白は、銃口がBBを捉え、トリガーにかかった男の指に力がこもるのを、ただ手をこまねいて見ているしかなかった。
 その男の動作を静かに見つめながらBBは、左の肘をほんのわずかに上げて袖を下に傾けた。
(え?)
 そこからの動きは目に止まらなかった。

 キン!
 BBはバットを振り抜いた。
「ごう!」
 声とも音ともつかないものを発して男は、首をカクンと後ろへのけぞらせた。
 その足が小幅に、左右にゆらゆらと揺れている。
 顔を上げた真白はその時、決着がついたことを知った。

 一直線の飛んだボールが、男の眉間に深くめり込んでいる。
 BBはバットを下ろすと、詰まっていたものを押し出すように、スウと息を吐いた。
「我ながら見事なピッチャー返し。此奴も慢心したでござるな。何ゆえ、拙者がボールを持たぬと思りしか?」

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