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文字数 406文字

 それを見るなりハーマンは、フンと鼻を鳴らした。
「よいか。お前だけではない」
「うぬ?」
「人間は誰しも、自分が何をしでかしているか、それを見るための鏡を持っていない」
「何の話でござる?」

 ハーマンは両手に込めていた力を抜いて鉄パイプを杖のように地面を突いたが、裕丈は彼の動きを注視し、バットの構えを崩さない。
「そういう人間たちを上から操る大いなる力が必要だ」
 ハーマンは光に満ちた空を仰いだ。裕丈はその目線を追うように、じろりと上に目を走らせたが、すぐにハーマンに戻した。
「すなわち神。そしてその神の位置に立つのは、人類で最古の文明、国を興し、歴史を学び、受け継いできた賢人たちだ。彼らによって理想郷、ユートピア、即ちエデンが築かれよう。自由主義の名のもとに踊らされた小日本は彼らの無尽の知恵の元で解放されるとともに、エデン建設の壮大な実験場となるのだ」
 そこまでいうと、ハーマンは歯を見せ、満面の笑みを浮かべた。
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