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文字数 523文字

「え?」
 マイケルが何のことか分かる前に、BBは彼の腰につけてあった催涙スプレーをさっと手に取って、カウンターに戻る。
「な、何をする?」
 液体を放つ音がして、ジャンの声がそれきり聞こえなくなった。
 フローリングの床と固い物が擦れる音がして、それもまもなく止んだ。
 さすがにこの状況は自分一人の手に負えないと判断したのか、マイケルはスマホを取り出して電話を掛け始めた。ドアの陰に身を潜めるも、彼の通話がそばにいる真白には筒抜けだった。
「……僕だ。すぐに来てくれないか? 頼む」

(チームの増援が来るとBBの身がまずい!)
 真白は振り向き、とっさにBBの名を呼んだ。
 意味が全く伝わっていないだろうか。BBが、空いた左手の親指を立てて応えたのに、真白はあっけに取られてしまった。

「さて」
 彼は、残ったリーダー格の男を見た。
 隙を見て逃げようともしなかったのが不審だったのだろう。BBも警戒し、緊張で身を固くしているのが、その背中を見ている真白にも分かった。
「君の御兄上、そして沙織の無念を晴らしたら、拙者も御役御免でござる」
「BBさん……」
 それに被さるように、しゃがれた笑い声がした。
「ヒヒヒ、それは終わってから言わないと、格好つかないことになるぜ」
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