8(9)

文字数 302文字

 留学生時代にこの国に馴染んだ僕には、日本人の友人もいる。彼らは一様に親切で、善良である。そして、国家指導者たちのエゴや資源の確保に始まった前の戦争が、両国の人々を狂気に至らしめたということも理解している。それに、互いに大事な家族がいることも忘れたことはない。

「公安事業の海外研修だと聞かされて海を渡り、十年ぶりに日本に戻ってきた。もっと胸を張れる仕事だと思っていた」
マイケルは、おもむろに自分のスマホを取り出して、その画面を真白に向けた。若い女性と、手をつないで立つ小さな子どもが二人写っている。
「僕の妻、そして息子と娘だ」
 妻という女性も子どもたちも、ここの現実とは無縁な穏やかな笑顔を浮かべている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み