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文字数 393文字

 裕丈は、地面すれすれのところをバットで左右にゆっくり弧を描いて、やがて正面で止めた。
「さような世迷い言、酒に酔うて申せ」
「言ってくれるな。が、お前の強がりも、まもなく泣き言に変わる。お前はお尋ね者となるだろう。幾多もあるチームの手からは、もはや逃れられまい。収容所の話は聞いた通りだ。そこでは、何倍もの楽しみが待っているぞ、ククク!」

 裕丈は表情もなく、ゆっくりとバットを振り上げた。
「至極、上等でござる」
「なに?」
「なおさら、その前に貴様を討ち果たさねばならぬ」
「お、愚か者め! お前は、さらに罪を重ねようというのか?」
 裕丈は、それには答えなかった。
 ハーマンの広い額に汗がにじむ。
「ハーマン殿……覚悟されよ」
 一瞬の静けさのあと、彼のバットがブンと鳴り、まずはハーマンの左膝に打ち込まれた。
「はう!」
 ハーマンはなすすべもなく、鉄パイプを取り落とすや、そのまま地面に崩れ落ちる。
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