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文字数 621文字

 裕丈が須波警察署の生活安全課の相談窓口を訪ねると、ロビーで待つように言われ長椅子に腰を下ろした。

 それから五分ほど経ったころだろうか。
「やあ、どうもお待たせしました」
 背後でくたびれた男の声がした。
 裕丈は反応して顔を上げる。
 やや小柄で腹の出た五十歳手前のような男が、色あせた紺の薄いナイロン生地のジャケットを羽織って立っていた。
 広い額は汗で光り、後頭部に向かって白髪交じりの髪が無造作になでつけてあった。

「どうも。BBさん、ですね。僕はその、警部補の、津村といいます」
 裕丈は気後れしたのか、慌てて黒いケースと水色の風呂敷包みを掴んで立ち上がり、さっと頭を下げる。
「多忙の折、恐れ入る」
 津村は、右手を左右に振った。
「あ、いやいや、僕は、その、なんだ、堅苦しいのが苦手でしてな」
 そういって歯を見せるようにして、人の好さそうな笑顔を浮かべた。
 裕丈に、彼は大きく頷いて見せる。
「あの僕、昼食べ損なって、これから、外に出るところ、だったんですよ」

 アポなしで訪問したのは、やはり迷惑だったか。裕丈はそう思い、恐縮しきりだった。
「それは、それは……申し訳ござらぬ」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて、付き合って、もらえないですかな。署のそばに、美味いラーメン屋があるんですよ。話ならそこで、聞きますよ」
 困惑顔の裕丈に、津村は笑い声を上げた。
「いや、あっはっは! そこはまさに、須波の名店ですな。BBさんも、きっと病みつきに、なりますよ」
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