10(5)

文字数 411文字

「おい、こーら!」
 男の声が、扉のすぐ外でした。
 彼女は、怯え震える自分の胸に右手を当てる。
 すると、扉がガツンと固く大きな音を立てて揺れた。

(な、何をする気?)
 真白は思わず、ビクリとして肩を縮み込ませた。
「うるあ、出てこいよ!」
 また、ガツンと鳴る。彼女は、息を飲んだ。
 男は扉を殴り続ける。しかも、そのテンポが徐々に速くなる。
 ダンダンダンダン!
「うるあー! うるあー!」
 奇妙な雄叫びも聞こえる。
 真白は、慌ててバッグからスマホを取り出した。恐怖で手元が覚束ない。治安維持チームに救援要請信号を発信すべく、何とか操作する。本来は連行や捜査の加勢を頼みたいときに、緊急で出すものだった。
 受信した指揮監督室の指令で、チームメンバーの誰かがGPSを頼りに、ここへやってくるはずである。
 もっとも、それが何人規模でいつやって来るのかは皆目見当がつかなかった。深夜に出動できるチームは決して多くないため、あてにし切れない。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み