12(9)

文字数 601文字

 BBはゆっくり立ち上がり、それを見下ろした。
「まあ、いい。少し楽にしてやろう」
「……え?」
 壁を背にして袋のネズミ同然の大男が目線を上げたその時、BBはバットを逆手に持ち直し、ヘッドを下に向けた。

「痛みを和らげるのは、決して時間などではない。……さらなる痛みだ!」
 大男が大きく目を見張った。それと同時に彼の股間をめがけて勢いよく叩き込む。まるでレタスの裂けるような音がした。
 ふっと息が漏れただけで、さすがに声は出ないようだった。大男は失神したのだろう。そのまま横倒しになった。

 BBは、それを見届けるとバットを腰にあてがい独り言ちた。
「これでもはや、何の役にも立つまい」
「お前、ふざけるな!」
 背後からジャンが警棒を振り上げてBBに迫った。
(!)
 真白が、それを止めようと進み出たが、杞憂に過ぎなかった。BBはいとも簡単に身をかわし、軽くバットを差し出すと、それがカウンターでジャンの額に入った。
「セーフティバント!」

 ジャンは、サングラスを吹き飛ばして後ろへひっくり返る。
「むう!」
 BBはジャンにのしかかり、床にあったロープを引き寄せる。手早く彼の両腕を固く縛りつけるなり、なおも暴れる彼をキッチンのカウンター内に押し込んだ。
「しばらくここで大人しくしててもらおうか」
「わ、分かっているのか? このままでは、ただでは済まされんぞ!」
 踵を返したBBは、マイケルに声を掛けた。
「しばし拝借する」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み