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文字数 329文字
対バンイベントが幕を開けたようだった。
ステージマイクを通して訥々と話す田宮オーナーの声が聞こえる。壁越しで何を言っているのか、あまり明瞭ではないが、沈んだ声で今夜のイベントが休業前最後の企画になるということを話しているようだった。
省吾は、サングラスを下に少しずらすと、上目遣いで声のする方をにらむようにしていた。
「それにしても」
「ん?」
寺山が省吾を見た。
「いったい何が、どうなってんだかよ」
真白は、省吾が改めて理不尽を誰ともなく訴え始めるのかと思った。が、その眼は怒りやいらだちというよりも、むしろ疑念に捕らわれているようだった。
「腑に落ちんな。いきなりの非常事態宣言。そいつが出てから、まだほんの数時間だろ? 役人ども、やたらと手際が良すぎるぜ」
ステージマイクを通して訥々と話す田宮オーナーの声が聞こえる。壁越しで何を言っているのか、あまり明瞭ではないが、沈んだ声で今夜のイベントが休業前最後の企画になるということを話しているようだった。
省吾は、サングラスを下に少しずらすと、上目遣いで声のする方をにらむようにしていた。
「それにしても」
「ん?」
寺山が省吾を見た。
「いったい何が、どうなってんだかよ」
真白は、省吾が改めて理不尽を誰ともなく訴え始めるのかと思った。が、その眼は怒りやいらだちというよりも、むしろ疑念に捕らわれているようだった。
「腑に落ちんな。いきなりの非常事態宣言。そいつが出てから、まだほんの数時間だろ? 役人ども、やたらと手際が良すぎるぜ」