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文字数 656文字

 マンションの入り口には、複数台のパトカーが集結していた。
 裕丈が4階へ上がると、エレベータホールにいる警官らに道を塞がれた。
「住人の方ですか」
 そのうちの一人がそう訊いてきたが、彼が津村警部補の名前を出すと通路の奥へ案内された。

 部屋の入り口に立った裕丈を見た津村が、手を上げた。
「BBさん、間に合わなかったようだな。こっちへ来なよ。やあ、ほんとこいつは、ひどいな」
 裕丈は部屋の奥へ入って津村と肩を並べる。
 横たわる男の変形した血まみれの頭部が見えた。津村は息を漏らす。
「見なよ。いちおう、司法解剖して、みないと分からないが、頭部を鈍器で、執拗に殴られて仕留められたようだ。原型を留めていない」

 裕丈は、思わず目をそむけた。
 それを見た津村は、口元を歪めた。「まあ、無理もない」
「この男も自業自得、なんだよ。本当の被害者はここの住人の女性だ。事情と背景は、これから調べるが、彼女は独身だそうだから、まあ、ちょうど訪ねてきた別の人間、たとえばーだけどたまたま恋人辺りが出くわして、やっちまったのかもしれないな。とすると、怒りにまかせて、この部屋にある花瓶か何かを手にして、何度も殴った、という線かな」

 今はシートが掛けられているが、この男の下半身はむきだしだったといって、暗に何がここで起きていたのか、津村は暗に知らしめた。
「ならば、拙者はこの男がどうなろうと容赦ならぬ」
「まあな。あんたにしたら当然の報い、というところか。生け捕りにしてだな、こいつに余罪を吐かせることができなかったのが、僕にしたら残念だが」
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