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文字数 634文字

 男は、膝のポケットから黒い柄のものを取り出した。
 手元で、しきりにカチャカチャいわせて威嚇している。時折刃のようなものが光った。

(バタフライナイフ?)
 報復してくる可能性のある自分にも危害を加えてくる可能性がある。そう考えた真白も警棒を握り直すなり、腰を低くして攻撃に備える。
 BBは、バットを前に構えた。男との間合いは三メートルもない。

「覚悟されよ」
 男は、鼻で笑う。
「待てよ。そいつあ、オレの台詞だな。いいか。なぜオレが逃げなかったのかを考えろ」
 BBが言葉を発さないのを見て取ると、男は薄ら笑いを浮かべた。
「この次のために、こいつの切れ味を試すためだ」
 BBは、じりと右へ回るように動いた。
「貴様に、この次などない」
「言うぜ」
 BBがバットを振り上げようとした。男はそれをくぐるように一気に突っ込んでくる。
 それを待っていたかのようにBBはバットのヘッドで男の顎を突こうとした。が、それよりも早く男はBBの懐へ入ってきて腕を払った。
 急いで避けたBBの右袖が切れているのが見える。その肘に血が細くにじんでいた。

 男は、BBの予想以上に素早い動きだったのだろう。BBは先ほどよりは気持ち間合いを置いて再び対面した。
 バタフライナイフが、リズミカルにカチャカチャと鳴る。
「ふふふ、こいつが血を欲しがっているぜ」
「ジェーン殿、下がっておれ」BBは、背中でいった。
 男が、ナイフを左右の手に持ち替えながらBBに対して間合いを詰めていく。それに従い、BBは後ずさりした。
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