13(8)

文字数 422文字

 マーシーが小さく舌打ちした。

「何かあったんですか」
 これは先ほどの警官の声である。
「さっき通報があった。白のミニバンで逃走したらしい。街頭防犯カメラでこの検問所に向かっているのが分かった」
 その警官の操作が必要なのか、前のゲートバーが開かない。

 声の主だった男が姿を見せた。ブラックスーツにサングラスといった、いかにもといったエージェント・ファッションである。
 その男が運転席のドアミラーに手を置き、トザキに向かって「エンジンを切れ」といった。「話がある」
「が、あいにくオレは」
「ん?」
 男は、眉間にしわを寄せた。
「お前に話すことなんか……何もないぜ!」
 トザキがそういうなり、エンジンが甲高く吠えた。
「おい!」
 その男が空いた手で車のボディに触れ、さらに助手席側からも同じスタイルの別の男が現れ、天井に両手を掛けて車内をのぞく素振りをした。
 マーシーがトザキの横腹を肘で突いた。
「出せ!」
「言われるまでもないわ!」 
 ミニバンは急発進した。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み