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文字数 1,150文字

 真白と寺山は、省吾の近況についてメッセージのやり取りがあった。 
 そのような中で、彼はこう書き送ってきた。
「そういえば真白は、市が治安維持チームのメンバーを募集しているのを知っているか?」
「いえ。なんですか、それ?」
「非常事態宣言を受けて発足したチームメンバー、いわば市の臨時職員の募集だ」

 これに参加することで、世間からのロックバンドのメンバーだった自分たちに対する圧力や疑念をそらすことができるだろう。
 警察と連携する職務を果たしていくうちに真白や省吾を襲った男たちを捕らえる機会が巡ってくるかもしれない。
 それで寺山は前者を理由に、週末だけのスポットメンバーとして、既に応募し登録も済ませたらしい。

 真白は、メッセージのやり取りを終えると、彼が貼り付けたURLをタップした。治安維持チームメンバーの募集サイトを開け、さっそく応募操作の手順にしたがって項目を埋め、送信した。

 申し込みしてから5日後。
治安維持チーム応募者向けの説明会は午後3時開始予定で、市庁舎B棟2階の大会議室が会場だった。
 この日に向けて、真白は長い黒髪をベリーショートの金髪に変えていた。
 悲しみや恐怖に負けそうになる自分を奮い立たせるために、あえてトレードマークであった長い黒髪をやめて、ひ弱な面のある元の自分との訣別を図ろうとしたのだった。
 入り口で受付を済ませると、長机が三列に並んでいるのが見えた。前の席から順に詰めて座ってほしいと席案内の係が手を差し伸べていった。

 会場に集まった応募者は、ざっと見渡す限り年齢層はさまざまだが、やはりほとんどが男性だった。受付の職員は半数が女性だが、室内は主に野太い声が飛び交っている。

 定刻になると会議室の扉が閉められ、市の公安関係の職員を名乗る人間が総勢百名ほどの応募者を前にマイクを持って、通り一遍のあいさつと大勢の応募があったことへの感謝の言葉を述べ、続けて業務概要の説明に移った。
 非常事態宣言を受けて組織された市内治安に携わる非常勤の業務であること。市内をパトロール巡回し、時に警察との連携で犯罪をおかした者、その容疑のかかる者を所定の場所に連行し当局の取調べ専門官に引き渡すのが主な職務であること。以上の職務に携わるメンバーの給与等の待遇。
 それらが、各自に用意された机上のレジメに基づいて話が進められた。

 やがてそれが終わると、チーム編成について発表があった。
最初の受付時に入り口でもらったカードの番号を確認するよう指示がある。それがチームのナンバーとのことだった。
 真白は「305」と書かれたカードを手にしていた。
 皆が三桁の番号を所持しているようで、どのナンバーのチームがこのフロアのどこへ集まるのか色分けされた図が、正面の大型液晶テレビに映し出されている。
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