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文字数 653文字

「取り締まりだ。我々と一緒に、来てもらおうか」

 モヒカン男は、上目遣いでハーマンを見たが言葉を発しない。その間を割って入るように他の男たちが寄ってきて口々にいう。
「警察でもないのに、おっさんよ、いったい何様なんだよ?」
「外で酔ってたら問題あんのかよ? なら、居酒屋から出てくる奴みーんなアウトじゃん」
「ハゲー!」
「ちゅうこっちゃ。回れ右して帰れよ、おら!」
 男たちは、そこまでいうと大げさにゲラゲラ笑い始めた。
 その際酒臭い息を吹きかけられたのもあってか、ハーマンはひどく不快そうに顔をそむけた。

 真白はマイケルと肩を並べて、そんな様子を三メートルほど後ろから眺めている。
 彼らが大人しく同行に応じるとは思えない。そこで警棒と催涙スプレーの出番となるのだろうが、単なる酔っ払いらを暴力でねじ伏せるのは気が引けた。なるべく穏便に、できればここで彼らに退去させて事が済めば。彼女は内心、そう願った。
 半面、なおも男たちの挑発は続く。

 猫背気味の黒縁メガネの男が缶ビールを握りしめて、ふらふらとハーマンの目と鼻の先に立った。
「ビールあげよーか?」
 ハーマンは、身じろぎ一つせず、黙っている。メガネ男は振り返り周りの仲間を見渡すと、再びハーマンに向き直った。
 メガネ男は、おもむろに頭の上の高さまでビールを掲げると、途端に大きな笑い声を立てた。
「ほら、あーげた! あはは! ばーか、ばーか!」
 ハーマンは右側のチームメンバーを手招きし、小声でいった。
「何だ、こいつは? 頭、いかれているのか?」
「は! おそらく!」
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