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文字数 754文字

 チーム「305」は、第2研修室とある。真白はやや小ぶりなトートバッグを肩に掛けるなり、折りたたんだレジメを手にして会議室を出た。
 蛍光灯が間引かれ薄暗く、ひんやりとした廊下を無言の人間の群れに混じって歩く。

 目的の部屋のドアの前に立ち、ノックをするとすぐに「どうぞ」という中年男性の声がした。
 そこは手狭な部屋で、サイドテーブルの付いたパイプ椅子が5個ばかり円を描いて並び、それらの2つに男性が腰かけている。
 ホワイトボードを背にしたスーツ姿の男性が顎を上げた。彼は片手を伸ばして、真白に掛けるよう促す。
 彼女が腰を下ろすや否や、その男性が口を開いた。

「初めまして。私は、チーム305(スリーオウファイヴ)の指揮を執るジャンです」
 バリトンとおぼしき張りと艶のある声だった。彼女はやや気圧されながら、おずおずと彼の差し出してきた右手を握った。
 脇にいる細身で背丈の高く青白い男は「マイケル」と名乗った。ジャンもそうだがマイケルにしても、いかにも東アジア系の顔立ちをしているが、名は西洋系である。
 その真白の内心にある戸惑いを見て取ったのだろう。ジャンは目を細めて微笑んだ。

「ここでは本名で呼び合うことはない。コードネームなのだが、まあ役名とか芸名くらいに思ってくれたらいい」
「はあ」
 気後れする真白にウィンクした。
「君の名前も複数候補を用意しておいたのだが。実際に会ってから決めることにしていたんだ」

 そういってジャンは、真白のベリーショートの金髪から白の短い丈のジャケット、ワンウォッシュのブルージーンズ、黒光りするパンプスのつま先まで、目線をさっと走らせた。
「なるほど。君は“ジェーン”という感じだな」

(え? 何、それ?)
 ジャンは、困惑しきりの真白のことは気に留めないようだった。彼女とマイケルを交互に目をやって一人頷く。



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