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 その後、チーム305は経営者、工場長の他、工場内の整備士三名をチームで乗ってきたボックス車で市庁舎に連行した。

 普段市職員もあまり出入りしないⅭ棟がその取調べに使われており、そのロビーには真白ら以外のチームに連行されてきた人間が少なからずいた。
 彼らは、一階の事務所窓口で所定の手続きをして出向いた取調べ官らに引き渡すと、チームの三人は所定の待機所に戻った。

 現場に初めて出て、なおかつ暴力的な場面を目撃して緊張の解けない真白の様子を、ジャンは見て取ったのだろう。
「初めは、誰でもびっくりする。ある程度の慣れは必要だ」
 彼は、真白に語りかけた。彼女は、顔が上げられないでいる。
 ジャンはそれに構わず話を続けた。
「ざっくりした言い方をすれば、彼らが有罪なのか無罪なのかは関係ない」

(え?)
真白がうつむいたまま横を向くと、マイケルも目を落として床の一角を見つめているように見えた。

「警察署にもノルマがある。ただ世に言われている検挙数や交通取り締まりの罰金額だけではない。事故・事件の件数が一定数以下に抑え込めないと県警から厳しく指導が入るらしい。それで、事故・事件を未然に防ぐことが重要になってくる。つまり、グレーゾーンにいる人間を調べるプロセスが入ってくる。これは止むを得んことだ」

 ジャンが新設の組織にいながらにして警察・公安事情に詳しいのは、前に犯罪防止重点都市に勤務していたためだという。
 今回その経験が買われ、須波市の非常事態宣言でチームの創設にあたり急遽招へいされたらしい。

「調書作成の手間をこちらで賄う合理化と同時に、市長襲撃で多数いることが露見した不満分子、犯罪予備軍のあぶり出しが、おそらく今後大きな意味を持ってくるだろう」

 実は、この混乱に乗じて火事場泥棒的な市外からの無法者の流入も懸念されているらしい。
 公安当局が市長襲撃犯の追跡に追われている状況は、それ以外の犯罪の温床になりかねないのだという。

苦渋に満ちた表情を浮かべたジャンは、二人にそう語った。
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