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文字数 689文字

 そういって手を伸ばしてきた。敵意はなさそうだ。真白は、とりあえずその手を握る。「どうも」
「こっちは、トザキ。うちの専属ドライバーだ」
 トザキと呼ばれた背の低い男は、無言でおずおずと手を出した。彼女はそれとも握手するが、トザキの手が汗でべたついていたせいで思わず、とっさに離す。

 その様子を見ていたマーシーは、にやけた。
「これでもこの男、ハンドルを握らせたら鬼人狂人大集合だぜ。一瞬で地の果てまで連れて行ってくれるぜ。安心してくれ」
「え?」
 困惑する真白に、マーシーはさらに愉快そうにしている。
 マイケルが、咳払いした。「ところで。さっそくだが」
「この二人を頼みたい」
 彼がBBと真白を指すと、彼女は、はっとした顔で彼を見た。
 それにはマーシーは少し拍子抜けしたようだった。
「なんだ。お前じゃないのか?」
「僕はいい」
「ふうん。そっか。まあ、時間もねえことだしな、野暮なことは聞かねえ」

 マイケルは、真白の正面に立った。
「ジェーン、君は逃げろ」
「なんで?」
「行け! このままでは、近々君も同じようにチームの標的になる。この街にいる日本人は皆、いずれ収容所送りになる運命だ」
 カウンターの向こうでジャンのうごめく音がして二人は、凍ったように表情が固まった。しばしの間黙り込んだあと、真白は声を潜めた。
「マイケルさんも家族がいるのに!」
マイケルは目を閉じると首を振った。
「……定員は二人なんだ」
「それなら、あたしはいい。ここはマイケルさんが逃げるべきだよ」
「若い女性がどうなるか話したろ? 頼むから行ってくれ! 一刻も早く須波を去るんだ! 僕は会員証を持っている限りチャンスはある!」
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