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文字数 583文字

 その翌日。
 夕方になって真白が出勤すると、ちょうどエレベータホールでジャンとばったり会った。

「ジェーン、昨日のだが、手柄だったよ」
「え?」
「夕べのうちに全員個別に取り調べたが、結局あの粋がった工場長が吐いたらしい。それに加え、あの後のがさ入れで、さらに数キロ単位の白い粉も見つかって裏が取れたと聞いている」

 真白は、その犯罪現場に居合わせていたことに改めて戦慄し、息を飲んだ。

「粉の分析結果はまだこれからだが、あそこで顧客相手に売りさばいていたようだな。とんだオプションサービスだ」
 ジャンは自分のいった冗談に幾分愉快そうな笑みを浮かべたが、真白は困惑するばかりだった。


「市長狙撃事件の関連ニュースをお伝えします。事件が起きて一週間が過ぎましたが、県警による捜査の進展もあって、狙撃に何らかの形で関わったとされる複数の者が任意同行の上事情を聞かれ、拘束されるケースが多くなっています」

「市長選において落選した対立候補の支援者が関係しているとの憶測が一部市議会議員の間で流布されていた問題で、対立候補だった鈴木氏及び支持していた与党幹部はこれを否定しました。『市民の投票で選ばれた政治家を、暴力で排除するやり方がまかり通るようだと、この国は民主主義ではなくなる。断固として認められない』党幹部はインタビューでそのように述べ、このたびの市長狙撃事件を強く非難しました」
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