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文字数 822文字

 メガネ男は、もう片方の手でスルメをつまみ、目の前に垂らすように持った。
「スルメあげよーか? ほら、あーげた! あはは、残念! ばーか、ばーか! あははは!」
「馬鹿はお前だ、メガネザル」
「はあ?」
 ハーマンと49のメンバーが、鉄パイプを構えた。
 メガネ男が目をむく。「な、なんだ、おっさん? や、やれるもんならやってみろよ!」

 ハーマンは首をすくめると、落ち着き払っていった。
「それでは、お言葉に甘えて」
 三人が詰め寄ると、さすがに酔いどれの男たちもひるんだ。そのうちの幾人かが切迫した様子で「やべえ」「警察を呼べ」と口々に言い合った。
 ハーマンは喉の奥で、ククと笑った。
「その必要はない」
その言葉に静まり返った場を、じっくり見渡してから彼はいった。
「我々は警察協力者だ」
 男たちは治安維持チームのことを知らないのか、あるいはチームメンバーが作業着姿や私服姿であるからか、意味がつかめない様子だった。男たちにしたら、単純に暴漢と出くわしたという感覚であるに違いない。

 これまで静観していたモヒカンが前へ出てくる。
 こういう場に慣れているのか、薄い唇から淡々と抑制の利いた口調だった。
「何、言ってやがんだ? お前ら、ちょづいてんじゃねえよ」
「それは我々の台詞だ」
 ハーマンは、わざとらしくため息まじりにそういった。
 モヒカンは、腕におぼえがあるのか、片足を引いて半身になると軽く両手の拳を握った。
 その場にいる者全てが一様に息を飲んだ。
 支援の立場にいる真白も、警棒を持つ手に思わず力がこもる。

 モヒカンがデモンストレーションのつもりか、「シュッシュ!」「シュッシュ!」と声を出しながら、49のメンバーを威嚇するように左右交互にストレートパンチを見せた。踏み込んでこない49のメンバーたちを見て、口の端に微かに笑みを浮かべる。
 やがて、弧を描くようにステップを踏み、回り込んでいく。近づいてきた彼に反応してメンバーの一人は鉄パイプを振りかぶった。
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