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文字数 620文字

「プライベートで使う本名とは別にここで呼び合う特別な名前を作ることで、君たちは迷いなく役に入りやすくなる。つまり職務に専念しやすくなるはずだ。そして、いつかはこのミッションが終わるだろうが、それ以降我々は本名に戻ると同時に再び他人同士の関係となり、そして各々のプライベートにスムーズに戻れる匿名性、安全性も帯びている」

 続けてミッションに説明が移っていく。
 マイケルは、もともと感情の起伏があまりなく言葉少ない質なのか、ずっと尖った顎先を指で撫で、口を挟まず物静かに聞いていた。

「叩いて埃の出ない人間はあまりいない。叩くのは取調べ官の仕事で、指示のあった場所に出向いて、そこにいる人間を確保、連行するまでが君たちに課された主な仕事だ。そうやって犯罪者を市内から間引くことが重要任務となる」

 ジャンは手振り身振りを交えながら言葉を継ぐ。
「取り締まる側は、信念が常に問われる。世に多くいる善良な人々、悪意のある人々それぞれから、何をどうしたって酷く疎まれ、あるいは恨まれることになろう。その覚悟の上で、なお誇りを持って現場に臨んでほしい」

 ジャンは至って穏やかな口調ではあるが、ミッションに対する情熱が汲み取れる。あたかも、あとの二人のモチベーションを喚起することを一番の目的として語りかけているようだった。
 終始表情が変わらないマイケルに対し、真白はそのミッションを全うする中で、兄に悪事を働いた連中を必ず自らの手で検挙してやると意気込んだ。
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