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文字数 395文字

 49の三人は、苦悶して転がる男たちの脚や腰、横腹を鉄パイプでしきりに殴りつけている。マイケルはすぐ脇で腕組みして無表情でその様子を眺めていた。

「ただの酔っ払いでしょ! そこまでやらなくても!」
 彼女が割って入るような勢いで、ハーマンとマイケルに向かって交互に訴えたが、二人はそれに対して黙って、じろりと見返したきりだった。
 やがてゴボゴボと詰まった排水パイプから何かが流れてくるような音が辺りでした。それがいくつかしたあと、鼻を突く酸っぱい匂いがする。
 殴打された男たちのうち、何人かが嘔吐したようだった。

 ハーマンがまもなく殴るのを止めると、他の二人も鉄パイプを肩に乗せて後ろ歩きで身を引いた。
「さて諸君。馬鹿は、どちらかお分かりかな」 
 ハーマンは笑みをたたえながら転がる男たちに語りかけたが、誰も受け答えする者はいない。
 地面を這う呻き声と激しい息遣いだけが真白の耳を捕らえていた。
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