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文字数 770文字

「ここでは、多分ですけど、女も男もないです。それに、あたし、ここでは女捨てる気で来ています」
「へえ、すごいです! すごい気合入ってますね!」

(あー、だめだ、この人……何か調子狂う)

 つい助けを求めるような目でマイケルを見たら、大げさに肩で笑う仕草をした。どうやら真白の心境が読めているようだった。

「ところで飯村さん」
「はい?」
「チームメンバーとして、今後の意気込みを、ぜひ聞かせてください!」

 真白は、しばらく目を伏せて考えていたが、やがて顔を上げて淡々といった。

「悪い人間を一人でも多く捕まえて、市民の皆さんがいつまでも平和に暮らせる街にしていきたいです」
 インタビューを締めくくるには、我ながら過不足のない模範解答だったと彼女は思った。
 逆を言えば、リップサービスでもあったのだが、インタビュアの女性は、満足気に見えた。
門脇も、ほのかに笑顔を浮かべる。
 そこでカメラマンがおもむろにやって来て、真白に門脇とのツーショット写真が撮りたいと声を掛けてきた。

「はあ」
 真白は、さらなる白々しい演出に脱力したが、治安維持チームのアピールという任務だと自分に言い聞かせる。

 二人はソファから立ち上がり、壁際に立った。
「それでは、握手をしてください。そして笑顔をこちらにくださーい。はい、それでは撮影しまーす!」
 カメラマンは、一眼レフカメラを構えてシャッターを切った。

「はい、そのまま。もう一枚撮りまーす!」
 笑顔を解きかけて、真白は再び頬を持ち上げた。
「はい、もう一枚! ……はい! ありがとうございました!」

 それで、早々とインタビューは終了し、解散となった。
 真白はマイケルのそばまで行くと、真顔になって目を見開くような仕草をして眉を浮かせた。

(これでいいんでしょ?)

 彼は白い歯をのぞかせて笑みを浮かべると、手でオッケーのサインを作った。

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