本が好きだった

文字数 237文字

 本が好きだった
 いまも好きだった
 唯一寄り添える
 現実に思えたから
 この世に本があること
 それを書いた人がいること
 わたしのように現実が嫌いで
 わたしよりも賢く鋭く温かく
 言葉で夢を築くことがありえたということが
 それはとてつもない現実だった
 本を読むということは、単に紙をめくり、紙を眺めるということでありながら
 自分にとってはなによりも広く深い探索だった
 その現実は、いまでも恋しかった
 いまでも現実が嫌いで
 その現実から離れるための苦闘と試練の道行きにこころが動いた
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