いつまでも

文字数 496文字

 いつまでも眺めていた、とか
 いつまでも抱き合っていた、とか
 たとえばそのように語られたとしても
 人間に生活があり死があるかぎり
 そのいつまでもには自ずから限界があるわけでありまして
 いつまでもの内実が五分であるか三十分であるか二時間であるかは問わないとしても
 そうそういつまでもとはいかないことはみなさん周知の事実でありまして
 いつまでも二人は幸せに暮らしました
 という場合は
 さすがに三十分という話ではなく
 四六時中毎分毎秒幸福だったという話でもなく
 数十年かそこら、紆余曲折はあれど、総体としては幸せであった、というような意味合いであるのでしょうが
 やはり二人も死ぬわけでありまして
 死後の幸福、もしくは瞬間の永遠性などを信仰しないかぎりは
 いつまでもとはいかないわけではありまして
 わたしはいつまでも詩を書いていたと
 仮にここに記してみたとしても
 嘘であることは明白であるわけですが
 そのいつまでもの限界を決めるのは
 わたしであってわたしではないので
 まあ、誠実な嘘とでも見なすことにして
 仮にここに記しておいても
 ことさら減るものでもないのでしょう
 わたしはいつまでも詩を書いていた
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み