些末な嫌悪

文字数 275文字

 テレビが嫌いになって
 ずいぶん経つ
 その音も映像も耐えがたいものがある
 ただ、寝たきりの人がテレビを慰めとしているのを見て
 そこに楽しみがあってよかったと
 ほっとするような気持ちにもなった
 自分の嫌いなんて、だれかのこころの救いに比べたら
 些末な問題でしかない
 でも、些末な嫌悪にこだわりたい
 人は嫌悪からもかたちづくられる
 美的感覚とは嫌悪の集積である、とだれかも言っていた
 あの人の楽しみに、水を差すものがありませんように
 心底そう願っている
 そして、こころをつぶすような音や映像や言葉は
 どうか滅びてくれますようにと
 変わらず嫌いつづける所存
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