ぼくはいつ死ぬのだろう

文字数 341文字

 なぜ、人は自分の死を知らないのだろう
 結末から逆算して書かれた物語のように
 どんな死を迎えるか知ってから
 生きることを始められないのはなぜなのか
 ある作家が、むかし言っていた
 推理小説を読むとき、終わりのページを先に開いて、犯人を知ってから読むと
 そうしないと、落ちついて読めないからだと
 ずいぶんもったいない読み方だとそのときは感じたが
 自分がどんな死を迎えるのか知りたいと、切に願うようなこんな日は
 その作家の読み方に近づいている気もする
 もう死んだ人だ
 推理小説をめくるようには
 自分の死を知ることはできなかった
 ぼくはいつ死ぬのだろう
 どんなふうに死ぬのだろう
 苦痛は怖いが
 消失はめでたい
 とはいえ寂しく
 いたましく
 ぼくはいつ死ぬのだろう
 死なないうちは
 死はいつも夢
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