記憶に残る光景は選べない

文字数 205文字

 住宅街の隅っこで
 夜明けの空を見たときの
 気まぐれの極致の短い散歩が
 何年経っても忘れない朝とは
 思わなかったな
 わからなかったな
 静かで淡くて綺麗で寂しくて

 土手の上から見下ろした
 夕暮れに染まった子どもたちの
 遊びの延長のような呼びかけが
 何年経っても忘れない声とは
 思わなかったな
 わからなかったな
 脆くて儚くて透明で懐かしくて

 記憶に残る光景は選べない
 それは世界に属する賜物
 いずれ返すことになる(さかずき)
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