長い長い長い小説

文字数 269文字

 長い長い長い小説を読んでいる
 ギネスブックに載るくらいの長さ
 サロンの会話がいつまでもいつまでも続き
 嫉妬の考察がいつまでもいつまでも続く
 心理の機微にどこまでもどこまでも分け入っていき
 恋愛の不毛がどこまでもどこまでもついてまわる
 そして音楽、音楽の描写
 素晴らしく精緻な音楽の描写
 長くて長くて長くて長くて
 休日の朝に読み始めて
 夕暮れになってもまだ終わらない
 そのよろこび
 半分読むのに数年ついやしたのに
 残りの半分は一週間ほど
 もうすぐ終わる
 終わってしまう
 長い長い長い小説
 百年前に死んだ作者が
 もうすぐ死ぬような淡い哀しみ
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