意味のない報告

文字数 445文字

 雨が窓の外で音を立てています
 いまは静かな朝です
 部屋は柔らかに薄暗いです
 わたしは意味のない報告をしています
 コーヒーを飲んだマグカップが置いてあります
 聖書と歎異抄とカフカの小説がそのそばに積み上げられています
 壁に掛けられた時計が正常に動いています
 さっきより少し明るくなっています
 けれどまだ十分に薄暗いです
 いまは六時四十二分だそうです
 いまの文を書いているうちに六時四十三分になっています
 わたしは意味のない報告をしています
 雨の音が耳を打っています
 鳥の声が聞こえています
 暇人のように掌を眺めています
 十字架のような線が目につきます
 びっくりするぐらい生命線が長いです
 削ってやりたいぐらいです
 死体の手相を見てみたいです
 わたしは占いがそれなりに好きです
 占い師はそんなに好きではないです
 わたしは未来がどうしても苦手です
 雨の音が少し弱まりました
 ぼんやりしているあいだに六時五十三分になりました
 わたしは意味のない報告をするために
 二度と訪れない十分を無駄にしました
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