死体にならないつもりだった

文字数 265文字

 一滴の涙に匹敵する
 怒りはあるか
 生まれてよかったと呟くような
 物言いたげな死体はあるか

 とめどなく
 想いは浮かぶ
 ひとつひとつ
 潰す毎日

 ぼくに似た死体が
 ニュースに映る
 夢を見た
 この国の現今の報道は
 決して死体を映さないはずなのに

 首は吊らない
 はずだった
 服毒とは縁のない
 道を歩いていたはずだった
 ガスを吸った味わいと痺れ
 知らずに終えられるはずだった
 踏切を越えて我が身を横たえて
 肉体が吹き飛ぶなり切断されるなりを
 奔馬のようにひた走る重量物に
 任せる運命ではなかったはずだった
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