空っぽの水筒

文字数 227文字

 空っぽの水筒に
 夕暮れに流した涙を詰め込んだら
 出かけよう
 だれも泣かない街へ
 そこに積まれた死体の山
 頭を砕かれた子どもの骸
 当然のように逸らされる視線
 水筒から
 涙を少しお裾分け
 旅立った先の荒野に届かないのは
 承知の上で
 見送りに振った手や
 餞別の言葉や
 注いだ数滴の涙
 役に立たない
 喉が渇いた
 眼も乾いた
 水筒が涸渇した
 だれも泣かない街の夕暮れに
 自分は身もこころも染まってしまった
 空っぽの水筒
 もういらない
 詰め込むものが
 もうないから
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