きょうもきょうとて

文字数 365文字

 世界中を旅してまわったと語る人が、とてつもなく薄っぺらで底の浅く悪くすれば差別的ですらある言説にしがみついているのを見るとき、
 世界を巡ってその程度の見識なのか、人は見たいものしか見ないものだな、ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけではないというあの格言は真理だなとか、
 自分でも驚くほど辛辣な思いがさまざまに去来するわけだが、他人に対する冷酷な視線はすべて自分に跳ね返るものだ、

 善き言葉、善き概念、善きなにかについて、自分は知っている、かつてたしかに触れたことがあると、そんな自惚れを抱いた瞬間、チープでみすぼらしい自我が外界の風に萎びていく、
 結局自分はなんなのか、なにをやっているのか、日々のすべてに疑問符がつく、矮小の波にさらわれる、犯した罪がよみがえる、苦役の空の日が落ちる、

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