秋の骨

文字数 277文字

 自転車のタイヤが
 枯葉を踏みしだく音
 秋の骨が
 折れるような

 映画を見た
 半世紀も前につくられた西部劇
 夕暮れの空が綺麗だった
 いま、現在の夕暮れの空を眺めず
 半世紀も前の夕暮れの映像を眺めているのは
 世界に対する裏切りだろうか

 世界の美に注意力を払わないのは、忘恩の罪だと
 シモーヌ・ヴェイユは書いていた
 でも、人間がつくりだしたものも世界の一部なら
 だれかの生み出した作品の美も
 いまの夕暮れに劣るものではない

 映画を見てから
 外に出た
 秋の骨が
 折れるような
 枯葉ばかり見つめていたい自分は
 春に対する
 罪人だろうか
 好きな季節は
 なんだか寂しく
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