いずれ死ぬ自分

文字数 663文字

 時間が経たないような振りをして
 日々をやり過ごして
 飼い慣らされた魂をもてあましながら
 いずれ死ぬのを待っている

 自分の死の前に
 出会いたくないもの
 他人の死
 人間の醜さ
 冷たい眼
 意味を見出だせない空騒ぎ
 その他いろいろ
 すべて

 いずれ死ぬ
 そのいずれは
 納得できる結末だろうか
 納得して死んだ人間はいるのだろうか
 知らない
 いないような気がする
 いてほしいような
 いてほしくないような
 わからない
 納得して死ぬ人間は幸福か?
 納得できないまま死ぬ人間は不幸か?
 わからない
 死んだ人のこころは
 わからない
 死ぬ前のこころも
 死ぬ瞬間のこころも
 もしあるならば
 死んだ後のこころも

 ぼくはまだ死んでいない
 いま生きている自分のこころがわかるか?
 ある程度
 すべてとはいえない
 なにもわかってはいないのかもしれない

 ぼくは他人のことがあまりにもわからなくて
 ずっと怯えている
 他人はこわすぎる
 おそろしすぎる
 それが本音だ

 自分のことはある程度わかっても
 好きになれるわけでもない
 自分に対して感じる気持ち悪さは
 他人から遠ざかっても逃げられない
 不愉快な影
 卑屈な汚れ

 死のことを考えるのは
 それがある意味では
 思考の停止を促すから
 死は圧倒的に現実なのに
 現実逃避の呼び水でもある
 死んだ後の自分を想像するほど安らかなことはない
 死ぬ瞬間の想像は
 こわい
 死の前にどれだけの孤独に陥っているのか
 暗い見通ししかないことも

 必死で言葉を吐き出して
 言葉は自分を
 どこにも連れ出してはくれなかった
 いずれ死ぬはずの自分のまま
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