だれもいないのが当たり前の荒野

文字数 243文字

 だれもいないのが当たり前の荒野で
 自分が立っているという不思議
 どこを目指そう
 なにを願おう
 だれかに出会うことだけは
 あり得ない荒野で
 荷物はなかった
 過去はなかった
 荷物と呼べるほどの荷物は
 過去と呼べるほどの過去は
 だれもいないのが当たり前の荒野では
 指先がすぐに乾く
 だれかと出会っても触れることが出来ないほどに
 ぼろぼろと崩れる
 その致命的乾燥は全身に及んでいくように思える
 だが心配は杞憂に終わる
 だれもいないのが当たり前の荒野では
 だれかに出会うことだけはあり得ないから
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