他人のためにいのちを懸けた人

文字数 426文字

 他人を助けるために亡くなった漫画家さんを思い出す
 子どもの頃に夢中になっていた漫画の作者さんが
 そんな死を迎えたことに動揺した

 自分はだれかのためにいのちを懸けられるだろうか
 死ぬつもりだったわけではないだろうけど
 どうしてもそんなことを考える

 怖くて指一本動かせず固まっている姿しかイメージできない
 情けない話だ
 それほど生きることを愛しているわけでもないくせに

 他人のために、大義のために、国家のために死ね、と命じる安全圏からの声にはこころの底からの軽蔑と(いか)りしか感じないけれど
 助けようとして死んだ人の行為には
 胸がざわめく

 人その友のために己の生命(いのち)を棄つる、(これ)より(おほい)なる愛はなし
 そんな言葉を記した聖典があった
 本当だろうか?

 人間は他者を自分として感ずることができるか、というのは人性上の最後の設問だ
 そんな言葉を記した詩人がいた
 本当だろうか?

 人は人のために死ねるのだろうか
 そのときその人を動かす衝動は
 いかなるささやきに由来するのか
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