首を吊らない理由

文字数 437文字

 首を吊らない理由をいくつ
 ぼくは用意できるのだろう
 人を殺した人が
 国家によって吊るされることには
 どれだけ抵抗があり納得できなかったとしても
 理由がある
 首を吊るシステムの国家に安住しているなら
 自分が首を吊らない理由を
 見つけなければいけない気がして
 いまのところ見つからない
 人を殺した人が
 吊るされるのは当然だという論理に
 後ろめたさを覚えず抗える理由も
 いまのところ見つからない
 ただ惰性の日常によって
 深く考えることを回避して
 自然のままに任せているだけ
 首を吊るというのは不自然な行為だから
 それによって
 自分の首吊りはいつまでも先送り
 自分が自分に耐えられなくなるまでは
 いくらでも曖昧にぼかすことができる
 人を殺した人は違う
 首吊りのシステムは確立されているから
 惰性によって過ごしていても
 その日常は明確に断ち切られる
 人を殺した人が
 だれかの日常を断ち切ったように
 この世からそのいのちを抹消される
 首を吊らない理由をいくつ
 ぼくは信じられるだろうか
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