好きなものが無意味でも

文字数 354文字

 わたしはよく思ったものだ
 こんなに好きなものも
 死ぬときは無力かもしれないなと
 なんの救いにもならないかもなと
 実際、晩年にそういうことを語る人はいる
 こんなものはすべて無意味だった
 こんなものに時間を費やしたのは完全に無駄だった
 とか
 たしかに、一理あるのだろう

 とはいえ
 結末の苦渋によって、それまでのすべてが無意味になるのか?
 そうだとしても、もともとなにもかもが好きになれなかったところに、少なくともそれだけは好きになれて、楽しむことができて、慰められ、励まされて、死に近づくその日までこころを惹きつけてくれたのなら
 それはやはり大したものではないか
 何事かではないか
 とも思う

 死ぬときどう考えるかはわからないが
 無意味をわたしはおそれない
 少しでも好きになれたなら
 少しでも楽しませてくれたなら
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