第74話 ベビーカーのパパさんこと、「ハンバーグ弁当」を譲ったパパさん
文字数 2,146文字
今日何時もの新宿の百貨店へとタイムセールの弁当を買う為に出向いた時の事、一階の靴売場で何やら靴を物色している母娘が居た。
一瞥しただけだが二人共マスク越しにも目許がそっくりで、遺伝子をそのまま移行したかのように背格好迄そっくり。
訊かずとも母娘である事は一目瞭然だ。
マスク越しに見た限りでは二人共美形。
コロナ禍とは言え娘さんの方は男が放っておくタイプではないと思うのだが、彼や旦那さんとではなく、母親と二人で買い物とは何か特別な理由が有るのだろうか。
と、今日番外編を掲載するつもりの私は、それ以上は気に掛ける事も無く地下の惣菜・弁当コーナーへと向かった。
最終目的地である地下の惣菜・弁当コーナーに着くと、辺りを見事なベビーカー捌きで駆け抜けるパパさんを発見。
しかも割引率が良く味の良い弁当だけを選んでいる。
そんな手際の良さに見惚れる私をよそに、彼は弁当を2個程持って行った。
次いでこの男出来る、と、思うよりも早く、私の欲していた割引率の良い「とんかつ弁当」を掻っ攫って行ったベビーカーのパパさん。
どうやらタイムセールでの立ち回りを熟知しているようだ。
しかーし、である。
私としては「とんかつ弁当」の次に狙っている「ハンバーグ弁当」迄も、ベビーカーのパパさんに取られる訳にはいかなかったのだ。
生活が掛かっているのだから。
そうして私は彼よりも僅かに近い位置に居た地の利を活かし、「ハンバーグ弁当」を素早く手許に引き寄せたのだが、僅かに遅れたとは言えベビーカーのパパさんも手を伸ばしていた。
と、ちらとベビーカーの中を見遣ると、可愛いらしい乳児が微笑んでいるではないか。
こんな可愛いい児から「ハンバーグ弁当」を取り上げる事が出来ようものか、と、よせばいいのに私と来たら、「あの、もし良かったらですけど」、と、ほぼ半額に割引された「ハンバーグ弁当」を譲ってしまったのである。
マスク越しにも眼を綻ばせながら、ベビーカーのパパさんは私にお礼を言ってくれた。
仕方無く「中華弁当」を手にレジ待ちの列に向かい、ベビーカーのパパさんの直ぐ後ろに並んだ。
と、先程靴売場で見掛けた母娘の娘の方がやって来て、ベビーカーのパパさんと話をし始めるでははいか。
してみるとベビーカーのパパさんは彼女の旦那で、ベビーカーの乳児は二人の子か。
と、かなりレジ待ちの時間が有ったのと、私が彼等の直ぐ後ろに居た事もあって、自然と二人の話が耳に入って来た。
以下に会話を交えその話の内容を要約する。
奥さんの曰く。
「何かママお花だけで良いんだって。
それより貴方の靴買ってあげなさいって。
だからサイズ言っておいた。
ママが選んでくれるって」
応じるベビーカーのパパさん。
「そりゃ、不味いよ〜。
今日はお義母さんの誕生日なのにさぁ。
何の為にここ迄来たか分かんないじゃん。
俺の靴なんて要らないのにさぁ」、と。
と、その後の話を要約すると、どうやらベビーカーのパパさんは「マスオさん(婿養子で妻の両親と同居)」らしく、今日は彼のお義母さんであり、奥さんのお母さんでもある人の誕生日らしい。
先程靴売場で見掛け女性である。
彼はベビーカーを押して一人でケーキもローストビーフも弁当も買って、娘である妻からお義母さんに誕生日プレゼントを買ってあげようとしたパパさんだったのだ。
おまけに家で待ってるお義父さんの大好きなワイン迄買ったのだそうだ。
何と出来た「マスオさん」なのだろう。
自分にはとても真似出来ない。
そんな良い人だからこそ、お義母さんも誕生日プレゼントを受け取れなかったのだ。
素晴らしい。
私も「ハンバーグ弁当」を譲った甲斐があると言うものだ。
買い物を済ませ私がエスカレーターで階上に上がった処に、先程のベビーカーのパパさんを始め合流したのだろう3人がいた。
と、一瞬ベビーカーのパパさんのお義母さんがマスクを取ったのである。
私は我が眼を疑った。
何故なら立ち止まって見惚れる程の美人だったからである。
それも女優レベルの美人だ。
娘や婿と一緒に居なければ或いは40代でも通るだろうが、彼等の年齢から逆算すると60代と思われる。
そんなお義母さんが、例えば風吹ジュンとか、黒木瞳とか、石野真子とか、或いは大地真央とかだったら、と、想像して戴きたい。
その時私は「マスオさん」ではあるが、ベビーカーのパパさんに「ハンバーグ弁当」を譲った事を後悔した。
何となれば男なら誰しも、あのお義母さんと住めるなら「マスオさん」でも良いからだ。
否、あのお義母さんと住めるなら、「マスオさん」が良い。
それに若奥さんの方はマスクを取った顔こそ見ていないが、お義母さんの顔を見るに遺伝からして美人なのは間違いない。
そんな二人の美人と同居しやがって。
クッソおーっ。
しかも靴迄買って貰いやがって。
と、ここで何故今日番外編ではなく、このエピソードを披露したかお分かり戴けたと思う。
むかついたので書かざるを得なかったのだ。
ここで一つ。
養子は肩身が狭いとかやり辛いとか言う先入観は、飽く迄先入観なのである。
世の中にはこの上なく幸せな「マスオさん」も居るのだ、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。
一瞥しただけだが二人共マスク越しにも目許がそっくりで、遺伝子をそのまま移行したかのように背格好迄そっくり。
訊かずとも母娘である事は一目瞭然だ。
マスク越しに見た限りでは二人共美形。
コロナ禍とは言え娘さんの方は男が放っておくタイプではないと思うのだが、彼や旦那さんとではなく、母親と二人で買い物とは何か特別な理由が有るのだろうか。
と、今日番外編を掲載するつもりの私は、それ以上は気に掛ける事も無く地下の惣菜・弁当コーナーへと向かった。
最終目的地である地下の惣菜・弁当コーナーに着くと、辺りを見事なベビーカー捌きで駆け抜けるパパさんを発見。
しかも割引率が良く味の良い弁当だけを選んでいる。
そんな手際の良さに見惚れる私をよそに、彼は弁当を2個程持って行った。
次いでこの男出来る、と、思うよりも早く、私の欲していた割引率の良い「とんかつ弁当」を掻っ攫って行ったベビーカーのパパさん。
どうやらタイムセールでの立ち回りを熟知しているようだ。
しかーし、である。
私としては「とんかつ弁当」の次に狙っている「ハンバーグ弁当」迄も、ベビーカーのパパさんに取られる訳にはいかなかったのだ。
生活が掛かっているのだから。
そうして私は彼よりも僅かに近い位置に居た地の利を活かし、「ハンバーグ弁当」を素早く手許に引き寄せたのだが、僅かに遅れたとは言えベビーカーのパパさんも手を伸ばしていた。
と、ちらとベビーカーの中を見遣ると、可愛いらしい乳児が微笑んでいるではないか。
こんな可愛いい児から「ハンバーグ弁当」を取り上げる事が出来ようものか、と、よせばいいのに私と来たら、「あの、もし良かったらですけど」、と、ほぼ半額に割引された「ハンバーグ弁当」を譲ってしまったのである。
マスク越しにも眼を綻ばせながら、ベビーカーのパパさんは私にお礼を言ってくれた。
仕方無く「中華弁当」を手にレジ待ちの列に向かい、ベビーカーのパパさんの直ぐ後ろに並んだ。
と、先程靴売場で見掛けた母娘の娘の方がやって来て、ベビーカーのパパさんと話をし始めるでははいか。
してみるとベビーカーのパパさんは彼女の旦那で、ベビーカーの乳児は二人の子か。
と、かなりレジ待ちの時間が有ったのと、私が彼等の直ぐ後ろに居た事もあって、自然と二人の話が耳に入って来た。
以下に会話を交えその話の内容を要約する。
奥さんの曰く。
「何かママお花だけで良いんだって。
それより貴方の靴買ってあげなさいって。
だからサイズ言っておいた。
ママが選んでくれるって」
応じるベビーカーのパパさん。
「そりゃ、不味いよ〜。
今日はお義母さんの誕生日なのにさぁ。
何の為にここ迄来たか分かんないじゃん。
俺の靴なんて要らないのにさぁ」、と。
と、その後の話を要約すると、どうやらベビーカーのパパさんは「マスオさん(婿養子で妻の両親と同居)」らしく、今日は彼のお義母さんであり、奥さんのお母さんでもある人の誕生日らしい。
先程靴売場で見掛け女性である。
彼はベビーカーを押して一人でケーキもローストビーフも弁当も買って、娘である妻からお義母さんに誕生日プレゼントを買ってあげようとしたパパさんだったのだ。
おまけに家で待ってるお義父さんの大好きなワイン迄買ったのだそうだ。
何と出来た「マスオさん」なのだろう。
自分にはとても真似出来ない。
そんな良い人だからこそ、お義母さんも誕生日プレゼントを受け取れなかったのだ。
素晴らしい。
私も「ハンバーグ弁当」を譲った甲斐があると言うものだ。
買い物を済ませ私がエスカレーターで階上に上がった処に、先程のベビーカーのパパさんを始め合流したのだろう3人がいた。
と、一瞬ベビーカーのパパさんのお義母さんがマスクを取ったのである。
私は我が眼を疑った。
何故なら立ち止まって見惚れる程の美人だったからである。
それも女優レベルの美人だ。
娘や婿と一緒に居なければ或いは40代でも通るだろうが、彼等の年齢から逆算すると60代と思われる。
そんなお義母さんが、例えば風吹ジュンとか、黒木瞳とか、石野真子とか、或いは大地真央とかだったら、と、想像して戴きたい。
その時私は「マスオさん」ではあるが、ベビーカーのパパさんに「ハンバーグ弁当」を譲った事を後悔した。
何となれば男なら誰しも、あのお義母さんと住めるなら「マスオさん」でも良いからだ。
否、あのお義母さんと住めるなら、「マスオさん」が良い。
それに若奥さんの方はマスクを取った顔こそ見ていないが、お義母さんの顔を見るに遺伝からして美人なのは間違いない。
そんな二人の美人と同居しやがって。
クッソおーっ。
しかも靴迄買って貰いやがって。
と、ここで何故今日番外編ではなく、このエピソードを披露したかお分かり戴けたと思う。
むかついたので書かざるを得なかったのだ。
ここで一つ。
養子は肩身が狭いとかやり辛いとか言う先入観は、飽く迄先入観なのである。
世の中にはこの上なく幸せな「マスオさん」も居るのだ、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。