第133話 対極を為す2組の女性達こと、同じホテルに出入りする女性達

文字数 1,435文字

 昨日の朝の事である。
 歌舞伎町の中に輸入菓子を扱う酒屋さんが在るのだが、緊急事態宣言で夜は凄く早く閉まってしまうので朝一で歌舞伎町へ。
 とは言え早くに来過ぎたので、その店の開店迄モーニングでも食べて待つか、と、喫茶店を物色中に東南アジア系の女性3人組に遭遇。
 年の頃なら40~50代と言った処か。
 私の直ぐ前を歩いていて話している言葉を聴いた限りでは、タガログ語のような気がする。
 と、なれば、フィリピン出身者だろう。
 但しこちらの男性と結婚して日本籍を取得したのかも知れないし、労働ビザで入国してコロナで国へ帰れなくなったのかも知れない。
 そんな彼女達の生活環境は私の知る処では無いが、とにかく観光客ではないように感じた。

 さて何故彼女達3人に私が注目したのかと言うと、彼女達の内2人がハイブランドのバッグを提げていたからだ。
 と、言っても、2人共明らかにそれと分かってしまう、それぞれ「グ○チ」と「ヴィ○ン」のフェイクのバッグである。
 それはもう潔い程のフェイク具合なのだ。
 やがてシティホテルの裏口へと消えて行った彼女達。
 恐らく彼女達は、そのホテルのベッドメイクを担当するメイドさんと推察した私。

 と、彼女達と入れ替わるようにして、正面玄関からギャル2人組が出て来た。
 恐らくそのホテルの宿泊客であろう。
 明らかに日本人のギャル2人組である。
 2人共ピンクのお洒落マスクを着けていた。
 年の頃なら10代後半~20代前半と言った処か。
 ところがそのギャル達は先程のメイドさん達とは打って変わって、本物であろう「M○M」と、「ヴィ○ン」のリュックをそれぞれ肩に掛けていた。
 そうして立ち止まり、目の前のオーロラビジョンに見入っていた彼女達。
 ふとオーロラビジョンを見ると、整形クリニックのCMが流されていた。
 まぁ、そこのクリニックかどうかは別にして、恐らく何れかのクリニックで世話になるつもりなのだろう彼女達。

 しかし裏口か正面かは別にして、同じホテルにこれ程対極を為す2組の女性達が出入りする事たるや、正にドラマではないか。
 片や安価なフェイクバッグを提げ、全く無駄を省いたライフスタイルのメイドさん達。
 恐らく倹約家で良く働く人達のように思う。
 片や本物のハイブランドのリュックに、整形手術に興味のあるギャル達。
 恐らく金の掛かる生活をしているのだろうし、肉体労働はしないタイプのように思う。

 さて、どちらのタイプの女性達のライフスタイルを、より肯定すべきだろうか?
 或いはどちらのタイプの女性達のライフスタイルが、より幸せなのだろうか?

 その質問には簡単に答えられない・・・・。
 と、久々に難しい事を真面目に考えた私。
 
 その後チケットショップに立ち寄る為新宿の大ガード下を通り抜けたのだが、ふと見ると「人生アウトローのおじ様」達が数人座っており、その内の一人が何とハイブランドのトートバッグを、段ボールの邸宅の横に何気なく置いているではないか。
 私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄も無いが、果たしてそのハイブランドのトートバッグは、本物なのかフェイクなのか。
 しかしそれはかなり汚れていて判別不能。
 即ち全くの謎である。

 と、ここで一つ。
 何れにしても「人生アウトローのおじ様」の持っていたトートバッグのブランドが、先程のギャル達の内の一人のリュックと同じブランドだった事を、ギャル達は知らぬが仏だと、皆様方には恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
 
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