第29話 ノーシャンプーさんこと、節約の達人
文字数 1,929文字
先日チケットショップに行った時の事、いつもは行列を為している店なのに、大して人が並んでいなかったので、その日は何軒か有る店の内その店で商品券を買う事にした。
しかし良く見ると買取窓口には行列が出来ていて、行列が出来ていないのは購入窓口だけなのである。
と、ふと購入窓口付近を見遣れば、たった1人だけ店員さんと話し込んでいる男性客が居るではないか。
しかーし、である。
単に話し込んでいるだけなのに、何故かその男性客の背後には誰一人並んで居ないのだ。
何故なの、と、良く良く見れば、その話し込んでいる男性の髪の毛に少々問題があったので
ある。
否、少々ではなく、かなりな問題かも。
何となればその男性の髪は解けば相当な長さになりそうなのだが、それは束ねられているのでなく、金束子のように固まっていたからだ。
その固まり具合たるや、新宿大ガード下で寝ている人達に勝るとも劣らない状態。
つまりワックスやジェルで固めたのではなく、一年とか或るいはそれ以上の期間洗髪しなかった為に自然と固まった感じなのだ。
それにキャップを被ってはいても、それはもう女性が後ろ髪を束ねる団子状の小さい固まりではなく、何かの球根か木の根っ子が頭に巻き付き、その上に申し訳程度にキャップが乗っている、と、言ったスゲえ状態なのである。
なる程そりゃ寄り付きたくねぇわなぁ、と、思いつつも好奇心旺盛な私は、その男性の後ろにたった1人で並んだ。
マスク越しにもスンと異臭が鼻を突いて来たが、私は口で呼吸をしながらその男性と店員さんの会話に聴き耳を立てた。
と、話の内容を良く聴くと、割引券を買うのにどれが1番安いのかを、根掘り葉掘り色んな角度から聴き込みをしていたのである。
まぁ、髪の毛と異臭の件は別にして、真摯に節約しようとしている事だけは確か。
また金束子状の髪の毛には白い物もチラホラと窺えるし、マスク越しで眼鏡も掛けていたが目元の感じからして40は越えている筈。
と、すると、髪の毛と異臭の件を別にすれば、節約好きな常識人と取れなくもない。
それなら髪の毛も節約の為なのか?
うーん。
と、そこで、商品券を買いその店を出た私は或る事を確かめるべく、歩様を早めた。
新宿駅西口に辿り着いた私は、沿道を一通り見渡し、やはりな、と、感慨一入に肯いた。
彼がこの西口で空缶を前に座る、「何時もの住人」ではなかったからである。
刹那私は先程のあの「ノーシャンプーさん」を、相当な「節約の達人」と確信した。
何故ならあの男性が新宿駅西口の「何時もの住人」で無いならば、あの金束子状の髪型も収入を得る為である事に気付いたからである。
私が思うにシャンプー代を節約すると共に、あの髪は売る為にああしているのだ、と。
例えばウィッグやヘアエクステンションには人毛が使われるらしく、長い髪だと買い取りしてくれるらしい、と、以前に聴いた事がある。
うーん。
やはり彼は「節約の達人」だ。
と、しかし、ここで新たな問題点が脳裏を過ぎったのである。
例えば野菜が店頭に並ぶ場合、「産地直送・○○さん家の農場から直送の採れたて野菜」、とかの表示があり、○○さんの写真が掲載されている。
仮にそんな表示がエクステンションやらに必要だった場合、「○○さんの金束子状だった切りたての髪」、と、なり、あの「ノーシャンプーさん」の写真が店頭に並ぶ事になる。
否、それじゃ、駄目じゃん。
それが「ノーシャンプーさん」の髪だと分かれば売れないじゃんか、と、早期に結論に到った私だが、しかしネット検索したところでは、店頭にそのような写真が並ぶ事は無いらしい。
良かった〜、と、胸を撫で下ろした私。
俺も髪の毛伸ばしてみっか!
と、決意し掛けたのだがやはり止めた。
何故なら彼の写真を店頭に並べる事が無かったとしても、売り手である「ノーシャンプーさん」をその眼で見たら、誰が彼の異臭漂う髪の毛を金出して買い取ってくれるの、と、根本的な問題に気付いてしまったからである。
ネット検索してみると髪の毛を買い取ってくれる美容関連の殆どの業者は、買い取りの際必ず髪を切る前の本人の写真を添付する必要が有るらしく、買い手はそれが本当に売り手の髪の毛なのかを確認するらしい。
ん、じゃぁ、売れる訳ねえわなぁ、と、私。
してみると「ノーシャンプーさん」がシャンプーもせずに髪の毛を伸ばしていたのは、売る為では無い事になる。
それなら単に面倒臭いからなのか。
或るいはシャンプーを買う金の節約の為。
何れにしても私には無理だ。
何よりも自身の異臭に耐えれる自信がない。
やはりどう考えても総てが謎の、「ノーシャンプーさん」だった。
しかし良く見ると買取窓口には行列が出来ていて、行列が出来ていないのは購入窓口だけなのである。
と、ふと購入窓口付近を見遣れば、たった1人だけ店員さんと話し込んでいる男性客が居るではないか。
しかーし、である。
単に話し込んでいるだけなのに、何故かその男性客の背後には誰一人並んで居ないのだ。
何故なの、と、良く良く見れば、その話し込んでいる男性の髪の毛に少々問題があったので
ある。
否、少々ではなく、かなりな問題かも。
何となればその男性の髪は解けば相当な長さになりそうなのだが、それは束ねられているのでなく、金束子のように固まっていたからだ。
その固まり具合たるや、新宿大ガード下で寝ている人達に勝るとも劣らない状態。
つまりワックスやジェルで固めたのではなく、一年とか或るいはそれ以上の期間洗髪しなかった為に自然と固まった感じなのだ。
それにキャップを被ってはいても、それはもう女性が後ろ髪を束ねる団子状の小さい固まりではなく、何かの球根か木の根っ子が頭に巻き付き、その上に申し訳程度にキャップが乗っている、と、言ったスゲえ状態なのである。
なる程そりゃ寄り付きたくねぇわなぁ、と、思いつつも好奇心旺盛な私は、その男性の後ろにたった1人で並んだ。
マスク越しにもスンと異臭が鼻を突いて来たが、私は口で呼吸をしながらその男性と店員さんの会話に聴き耳を立てた。
と、話の内容を良く聴くと、割引券を買うのにどれが1番安いのかを、根掘り葉掘り色んな角度から聴き込みをしていたのである。
まぁ、髪の毛と異臭の件は別にして、真摯に節約しようとしている事だけは確か。
また金束子状の髪の毛には白い物もチラホラと窺えるし、マスク越しで眼鏡も掛けていたが目元の感じからして40は越えている筈。
と、すると、髪の毛と異臭の件を別にすれば、節約好きな常識人と取れなくもない。
それなら髪の毛も節約の為なのか?
うーん。
と、そこで、商品券を買いその店を出た私は或る事を確かめるべく、歩様を早めた。
新宿駅西口に辿り着いた私は、沿道を一通り見渡し、やはりな、と、感慨一入に肯いた。
彼がこの西口で空缶を前に座る、「何時もの住人」ではなかったからである。
刹那私は先程のあの「ノーシャンプーさん」を、相当な「節約の達人」と確信した。
何故ならあの男性が新宿駅西口の「何時もの住人」で無いならば、あの金束子状の髪型も収入を得る為である事に気付いたからである。
私が思うにシャンプー代を節約すると共に、あの髪は売る為にああしているのだ、と。
例えばウィッグやヘアエクステンションには人毛が使われるらしく、長い髪だと買い取りしてくれるらしい、と、以前に聴いた事がある。
うーん。
やはり彼は「節約の達人」だ。
と、しかし、ここで新たな問題点が脳裏を過ぎったのである。
例えば野菜が店頭に並ぶ場合、「産地直送・○○さん家の農場から直送の採れたて野菜」、とかの表示があり、○○さんの写真が掲載されている。
仮にそんな表示がエクステンションやらに必要だった場合、「○○さんの金束子状だった切りたての髪」、と、なり、あの「ノーシャンプーさん」の写真が店頭に並ぶ事になる。
否、それじゃ、駄目じゃん。
それが「ノーシャンプーさん」の髪だと分かれば売れないじゃんか、と、早期に結論に到った私だが、しかしネット検索したところでは、店頭にそのような写真が並ぶ事は無いらしい。
良かった〜、と、胸を撫で下ろした私。
俺も髪の毛伸ばしてみっか!
と、決意し掛けたのだがやはり止めた。
何故なら彼の写真を店頭に並べる事が無かったとしても、売り手である「ノーシャンプーさん」をその眼で見たら、誰が彼の異臭漂う髪の毛を金出して買い取ってくれるの、と、根本的な問題に気付いてしまったからである。
ネット検索してみると髪の毛を買い取ってくれる美容関連の殆どの業者は、買い取りの際必ず髪を切る前の本人の写真を添付する必要が有るらしく、買い手はそれが本当に売り手の髪の毛なのかを確認するらしい。
ん、じゃぁ、売れる訳ねえわなぁ、と、私。
してみると「ノーシャンプーさん」がシャンプーもせずに髪の毛を伸ばしていたのは、売る為では無い事になる。
それなら単に面倒臭いからなのか。
或るいはシャンプーを買う金の節約の為。
何れにしても私には無理だ。
何よりも自身の異臭に耐えれる自信がない。
やはりどう考えても総てが謎の、「ノーシャンプーさん」だった。