第137話 朝から酒盛りの3人こと、カオスな3人

文字数 1,501文字

 昨日の朝の事である。
 何時ものモーニングを食べたくて、新宿のと或る交差点へと向かっていた私。
 するともう直ぐ交差点と言う処で、前から頻りに後ろを振り返る、20代と思しき男性が遣って来たのである。
 しかしその男性の振り返った曲がり角の先が、調度建物で死角になっていて、何が起こっているのか分からなかったのである。

 余程の美女が居たのか、或いは芸能人か?

 何事か気になって仕方のない私は、彼の振り返った先へと歩調を速めた。
 するとその先には、「そりゃ後ろも振り返るわなぁ」、と、言う連中が居たのである。
 そこには何と酔っ払いらしき4~5人の男が歩いていて、中でもその酔っ払いの取り囲んだ輪の中心に居る男たるや、他の酔っ払い達に支えられる程足許も覚束ない様子なのだ。
 皆20代であろう男達なのだが、彼等は今がどんな時期か分かっているのだろうか?

 朝の9時過ぎくらいの事だ。

 ひょっとしたら、否、ひょっとしなくても、昨日の夜から呑んでいたのだろう彼等。
 広場なのか道端なのか、或いは休業要請破りをしている店なのか、何処で呑んでいたのかは知らないが、酔っ払うわ密を作るわで、けしからん事この上無い連中である。
 彼等の周囲1mに近寄る人こそいないものの、彼等と来たらマスクを着けていても、皆が皆顎マスクに鼻マスク、と、とても容認出来る状態ではない。
 仮にコロナ禍でなくとも常識を疑う、けしからん酔っ払い達なのだ。
 そんな彼等に対しては言葉も出ない。

 そうして嘆息を吐き酔っ払い連中に呆れる私であったが、やがて新宿大ガード周辺に差し掛かると、今度は酔っ払い等と言う中途半端な輩ではなく、明らかさまに酒と分かる缶を並べ、朝っぱらから広場で酒盛りをしている3人が居たのである。
 その上3人共マスクをしていないのだ。
 私が、「ゲッ、マジで」、と、思った事は言う迄もない。

 けしからんを通り越し瞠目を禁じ得ない私。

 しかし良く見るとその彼等は、「人生アウトローのおじ様2人と、人生アウトローのおば様1人」の3人だったのである。
 更に目を凝らしてみればその人生アウトローのおじ様やおば様は、以前から良く見掛ける新宿大ガード下の住人である事が判明。

 ん?

 と、言う事は、これは再三都や国が注意喚起を促す「路上飲み」ではなく、彼等に取っては「家飲み」になるのだろうか?

 一体どっちだぁ!

 うーん。
 しかし厳密に言うと、新宿大ガード下は住所として登録出来ない。
 畢竟彼等は住所不定となる。
 と、言う事はつまり報道等オフィシャルには、住所不定の3人による広場での「路上飲み」と言う事になり、「家飲み」ではない。
 それと気に掛かる事がもう一つ有る。
 それはここ最近政府が作成を促すマイナンバーカードを、人生アウトローの3人が所持しているか否かだ。
 ワクチン摂取の際にも持っていた方が有利らしいし、それに皆ワクチン摂取最優先の年齢に達しているように思えるのだ。
 とは言え、持っている訳ねぇか。 

 否、ひょっとすると持っているかも?

 しかしそうして彼等がマイナンバーカードを所持しているか否かを知る事より、優先されるべきは彼等に酒盛りを止めさせる事と、マスク着用の必要性を説くべき事なのではないか。
 そう思った私であったが、しかしそれは取り越し苦労なのではないか、と、思い直した。

 と、ここで一つ。  
 そう思ってはみたものの街往く人は誰1人として彼等に近付く事は無く、完璧なソーシャルディスタンスを保っており、また彼等自身が誰よりもその事を知っているであろう、と、恐惶謹言させて戴く。
 それにしても新宿は何処迄もカオスなのだ。
 かしこ。
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