第117話 仕事の出来る美人OLこと、二重に間違えてしまった美人OL

文字数 1,171文字

 昨日の夕方スーパーに買い出しに行った時の事である。
 ディスカウントスーパーでは無く久し振りに駅前のミドルクラスのスーパーへ行ったのであるが、その前にATMで金を引き出してから、と、駅前の銀行へ。
 するとその銀行の手前で、スタイル抜群の女性が颯爽と私を追い越して行ったのである。
 ショートの髪に淡いベージュのパンツスーツ姿で、OLさんなのか如何にも仕事が出来そうな感じ。
 すれ違いざまに一瞥すると、マスク越しにも
美人と分かる。
 急いでいたのはポストに郵便物を入れる為だったようで、彼女は手にしていた封筒の類いをポストに入れ始めた。
 と、その様子を横目に私はATMへ。
 ところが金を引き出して表へ出てみると、先程の美人OLが何処へも行かず、未だポストの前に立っているではないか。

 ん? どういう事?

 と、様子を窺うと、美人OLはスマホを耳に当てて何か話していた。
 どうやら郵便局に電話していて、郵便物では無い書類迄間違えてポストに入れてしまったようなのだ。
 仕事の出来る美人OLも形無しである。
 可哀想だとは思うが、私にはどうする事も出来ない。
 恐らく明日以降郵便局に出向き、その間違えて投入した書類を回収するしかないだろう。
 後ろ髪引かれる思いではあったが、彼女を尻目に私はスーパーへ。

 スーパーでは3日~4日分の買い出しのつもりだったので、買った物を順に入れて行くと、1人住まいとは言え籠が一杯になった。
 直後レジ待ちの列へ。
 すると偶然にも私の直ぐ後ろに、先程郵便物をミスった美人OLが遣って来たのである。
 かなり落ち込んでいる様子で、ずっと下を向いている。
 手には柔軟剤と善哉(ぜんざい)のレトルトパックを握り締めていた。
 変てこな組み合わせではあるが、彼女はたった2つの商品を買うだけなのだ。
 ここでこそ私の出来る事をして上げなければならない、と、彼女に一つ前の順番を譲る事にしたのである。

「良かったら前どうぞ。自分は結構買い物多いんで」

 私がそう告げると彼女は下を向いたまま、軽く会釈だけを返して私の一つ前へ。
 やはり落ち込んだままだ。

 やがて順番が廻って来てレジで精算を済ませた彼女が、サッカー台(袋詰めスペース)で買った柔軟剤と善哉のレトルトパックをトートバッグに詰めていた。
 と、帰るのかと思いきや、スマホで誰かと電話した後再び売り場へと戻って行った彼女。

 帰り際ふとサニタリー用品の売場へ視線を走らせると、そこに彼女の姿が有った。
 どうやら洗濯洗剤を手にした様子。

 と、ここで一つ。
 私が思うに彼女は、「柔軟剤と洗剤を買って来て欲しい」と、頼まれたのを、「柔軟剤と善哉を買って来て欲しい」に聞き違えたのではないか、と、皆様方に恐惶謹言させて戴く。
 重ねて落ち込んでいる時の買い物は、出来るだけ差し控えるべきだとも。
 かしこ。

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