第47話 泣き出した女の子こと、シールを手に笑顔の女の子
文字数 1,283文字
今日の夕方食糧を買い出しに行った時の事、ビニール製のゴム鞠が私の向こう側から転がって来たのである。
と、同時に2〜3歳と思しき小っちっちゃな女の子が、凄い勢いでこちらに向かって走って来るではないか。
ゴム鞠をキャッチしてあげなければと思ったのだが、図らずも私の歩いている道路の反対側の方へと転がって行ったのである。
しかも女の子が走り出した直後、「走っちゃ駄目! ○○ちゃん戻りなさい!」、と、切迫した声と共に、お母さんであろう女性が女の子の後を追い掛けて来る。
女の子の走って行く方向には見通しの悪い四つ辻があって、万が一車が遣って来たら大変な事になってしまう。
こうなっては女の子を止めるしかない。
咄嗟に女の子の前に立ちはだかった私は、「駄目! 危ない」、と、声を上げた。
すると私が抱き上げる間も無くその場にへたり込んだ女の子は、ワァワァと声を上げて泣き出してしまったのである。
やがて追い掛けて来たお母さんが後ろから女の子を抱き上げた直後、私の後ろを結構な勢いで車が通過して行った。
次いでお母さんが、「走っちゃ駄目って言ってるでしょ」、と、叱ると、女の子は余計に鳴き声を高めた。
バツが悪くなった私は女の子に対して微笑んで見せたが、一向に泣き止んでくれない。
お母さんの方はと言うと、「本当にありがとうございました。びっくりしてるだけですから、気にしないで下さい」、と、私に対して頻りに頭を下げてくれてはいる。
しかしそれにしても助けたと言うのに、女の子に泣かれてしまうとは何とも不本意だ。
と、その時私は財布の中に貯めていた、ポケモン及びドラえもんシールが有った事を思い出した。
パンやお菓子等に付属のおまけを、親戚のチビッ子達にあげようと貯めていたものである。
咄嗟に財布から3枚程のシールを取り出して差し出すと、私の思惑通り一瞬女の子は泣き止んでくれた。
ところがお母さんが、「大丈夫です。そこ迄して戴かなくても」、と、固辞するのである。
仕方無しにシールを引っ込めると、再び泣き出す女の子。
そこで転がって行ったゴム鞠を拾いに行って、戻って来てお母さんに手渡したのだが、それでも女の子は泣き止まない。
結局固辞するお母さんを押し切って、もう一度女の子の手にシールを握らせてあげると、途端に泣き止んでくれた。
その後女の子が笑顔になってからその場を立ち去ったのだが、直後ふと思い立ったのだ。
もしその時に私が「飴」、否、「飴」ではなく「飴ちゃん」を持っていて、「ほれ、お嬢ちゃん飴ちゃんあげよ」、と、言っていたらどうなっていたのだろうか、と。
きっとお母さんも私が差し出したのがシールだから、何某かの金銭を伴うものと思って気を使ったのだろうし、「飴」なら固辞しなかったように思う。
それと優しく関西弁で言っていたら、ちっちゃな女の子の気も解れた筈。
そう考えると恐るべし関西のおばちゃんだ。
と、言う事で、今後は「飴ちゃん」を持ち歩く事にした私であった。
皆様方にも時には関西のおばちゃんになるのも悪くは無い、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。
と、同時に2〜3歳と思しき小っちっちゃな女の子が、凄い勢いでこちらに向かって走って来るではないか。
ゴム鞠をキャッチしてあげなければと思ったのだが、図らずも私の歩いている道路の反対側の方へと転がって行ったのである。
しかも女の子が走り出した直後、「走っちゃ駄目! ○○ちゃん戻りなさい!」、と、切迫した声と共に、お母さんであろう女性が女の子の後を追い掛けて来る。
女の子の走って行く方向には見通しの悪い四つ辻があって、万が一車が遣って来たら大変な事になってしまう。
こうなっては女の子を止めるしかない。
咄嗟に女の子の前に立ちはだかった私は、「駄目! 危ない」、と、声を上げた。
すると私が抱き上げる間も無くその場にへたり込んだ女の子は、ワァワァと声を上げて泣き出してしまったのである。
やがて追い掛けて来たお母さんが後ろから女の子を抱き上げた直後、私の後ろを結構な勢いで車が通過して行った。
次いでお母さんが、「走っちゃ駄目って言ってるでしょ」、と、叱ると、女の子は余計に鳴き声を高めた。
バツが悪くなった私は女の子に対して微笑んで見せたが、一向に泣き止んでくれない。
お母さんの方はと言うと、「本当にありがとうございました。びっくりしてるだけですから、気にしないで下さい」、と、私に対して頻りに頭を下げてくれてはいる。
しかしそれにしても助けたと言うのに、女の子に泣かれてしまうとは何とも不本意だ。
と、その時私は財布の中に貯めていた、ポケモン及びドラえもんシールが有った事を思い出した。
パンやお菓子等に付属のおまけを、親戚のチビッ子達にあげようと貯めていたものである。
咄嗟に財布から3枚程のシールを取り出して差し出すと、私の思惑通り一瞬女の子は泣き止んでくれた。
ところがお母さんが、「大丈夫です。そこ迄して戴かなくても」、と、固辞するのである。
仕方無しにシールを引っ込めると、再び泣き出す女の子。
そこで転がって行ったゴム鞠を拾いに行って、戻って来てお母さんに手渡したのだが、それでも女の子は泣き止まない。
結局固辞するお母さんを押し切って、もう一度女の子の手にシールを握らせてあげると、途端に泣き止んでくれた。
その後女の子が笑顔になってからその場を立ち去ったのだが、直後ふと思い立ったのだ。
もしその時に私が「飴」、否、「飴」ではなく「飴ちゃん」を持っていて、「ほれ、お嬢ちゃん飴ちゃんあげよ」、と、言っていたらどうなっていたのだろうか、と。
きっとお母さんも私が差し出したのがシールだから、何某かの金銭を伴うものと思って気を使ったのだろうし、「飴」なら固辞しなかったように思う。
それと優しく関西弁で言っていたら、ちっちゃな女の子の気も解れた筈。
そう考えると恐るべし関西のおばちゃんだ。
と、言う事で、今後は「飴ちゃん」を持ち歩く事にした私であった。
皆様方にも時には関西のおばちゃんになるのも悪くは無い、と、恐惶謹言させて戴く。
かしこ。