第28話 菜々緒&上白石萌音似かもな二人組こと、長身&ちっちゃめの二人組

文字数 2,686文字

 現在TBSで絶賛放送中の「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」、と、言う、正式名がやたらと長いタイトルのドラマをご覧になっている方は、少なくないように思う。
 そのドラマのせいで一夜明けた水曜日ともなれば、前日の印象が強く刷り込まれており、私なんぞは長身の女性を見掛けるとボス役の菜々緒に、「ちっちゃめの女性」を見掛けると部下である上白石萌音に見えてしまって仕方がないのである。
 そんな昨日の水曜日の事、私はドラッグストアにサプリメントと口臭ケアタブレットを買うべく新宿迄出掛けたのであるが、その店の中で偶然にも長身の女性とちっちゃめの女性の二人組を見掛けてしまったのだ。
 前夜のドラマの印象が強く残っている私は、マスク越しで顔が見えていないのにも拘らず、その二人組が菜々緒&上白石萌音にしか見えなかったのである。
 ところがどこ迄行ってもドラマはドラマであり、現実は全く逆である事が判明。
 どうも「ちっちゃめの女性」がボスで、長身の女性が部下と言うか後輩と言うか、兎に角「ちっちゃめの女性」が体格とは正反対で態度がやたらデカイのだ。
 サプリメントコーナーの前では一番高い位置に並んだサプリメントを、あれやこれやと取らせては吟味していた。
 また他にも買い物したらしき荷物を持たせているようで、長身の女性は肩から振分荷物のようにしてペーパーバックを提げていた。
 逆にその「ちっちゃめの女性」は、と、言うと手ぶらでそのドラッグストア内を自由に駆け巡っており、長身の女性が気の毒に思えた。

 しかし、どうであろう。

 もしこれが逆であった場合、気の毒だけで済むだろうか?
 或るいは虐めであるとか虐待であるとか、仮にそこ迄行かなくても、最低限ハラスメントの域内として取り扱われる話になるのでは、と。
 ここで私が何を言いたいかと言うと、長身でスタイルの良い女性がチヤホヤされる欧米と比べ、日本では圧倒的に「ちっちゃめの女性」の方が得をしているのではないか、と、言う事。
 兎にも角にも断然圧倒的に、「ちっちゃめの女性」は周囲に気を使って貰えるのだ。
 斯く言う私もそう言う「ちっちゃめの女性」が重そうな荷物を持っていた際には、例えば階段の上迄とか、階段を下りる迄とかに、街中で見返りも求めずに持って上げた事がしばしばである。
 しかし身長が180Cm程度ありそうな女性が重そうな荷物を持っていても助けない、と、言うか、助けられないのが実際の所なのだ。
 別に助けなくても長身の女性なら1人で何とかなりそうに見えると言うのもあるが、何より仮に身長173Cmの私がそんな長身の女性を助けようとしても、逆に私が助けられているように見えてしまうからである。
 それにTBSのドラマでもそうではないか。
 ドラマの中ては上白石萌音が菜々緒にこき使われているが、実際女優としてはと言うと、主役が「ちっちゃめ」の上白石萌音であり、長身の菜々緒は飽く迄も脇役だ。
 断然上白石萌音が得をしているではないか。
 斯様に「ちっちゃめの女性」が得をしていると言う隠された事実を、奇しくも買い物を終えたのか、レジ待ちで私の前に居並んだ例の二人組の女性が裏付けてくれた。

 実は私が上司或るいは先輩と思っていた長身の女性と、部下或るいは後輩と思っていた「ちっちゃめの女性」の二人組は、私の想像した関係とは全く違っていた事が判明。
 以下に二人の会話の一部を抜粋し披露する。

 長身の女性に対し「ちっちゃめの女性」の曰く、「悪いから持つよ」、と。
 次いで長身の女性が押し被せる。
「いいって、いいって。
 つか、前から言ってるけど、あんたに荷物持たせると男は私が酷い女と思うんだかんね」

 と、ここで、私ならずともこの遣り取りを聴けば、「ゲッ、マジで」、と、瞠目を禁じ得ない事だろう。
 そうなのである。
 二人は上下関係ではなく、横並びの対等な関係だったのだ。

 で、その後、「そんな事思う人なんていないよぉ」、と、「ちっちゃめの女性」が返すと、すかさず長身の女性が応じたのである。
「それが、男はそう思うの」、と。

 うーん。
 確かにそうである。
 正に真理を突いた言葉だ。
 なる程彼女の言う通り私もそう思う。
 と、なると、長身の彼女は、その「ちっちゃめの女性」の為に荷物を持っていたのではなく、自身の為に荷物を持っていた事になる。
 またその事をその直後に見掛けた彼女達を見て、なぁる程ね、と、肯けたのだ。
 会計を済ませた私が店を出ると、さっきの二人組の女性が彼女達の彼なのだろうか、二人組の男性と談笑していて、既に長身の女性から荷物を受け取ったのか、その男性二人があの振り分け荷物を手分けして持っているではないか。
 総ては計算されていたのだ。
 
 恐るべし女子のテクニック。
 業師としか言い様が無い。
 男共はその直前に交わされていた、二人の女性の会話の内容を知る由もないだろう。
 長身の女性が自身で自身のイメージを創った上、荷物を渡された事を知らないでいるのだ。

 とは言え一番得しているのは、と、言うと、
やはり「ちっちゃめの女性」に他ならない。
 気を使う事もなく、また荷物を持つ事さえ無いのだから。
 その後長身の女性の苦労を思いながら2〜3分程歩いた処で、見知らぬ女性が財布から小銭をばら撒いている場面に出会した。
 助けようとしたが、ざっと5〜6人の男達が小銭を拾って上げていたので、私の加勢する隙等無かった。
 しかし事が収束する迄前には進めそうにないので、私は立ち止まって様子を窺っていた。
 やがて小銭を拾う作業を終えたその女性が立ち上がったのだが、やはり予測通り彼女は「ちっちゃめの女性」だったのである。
 ここでも得をしていたのは、「ちっちゃめの女性」であった。

 その後私は今度生まれ変わったら、誰が何と言おうと、絶対に「ちっちゃめの女性」に生まれてやる、と、胸中に誓った。
 そう、あの田中みな実のような。
 あんな風に生まれて来たら、その時点で勝ちなのだ、と。

 追伸
 長身の女性の皆様へ。
 こんな日本でごめんなさい。
 もし私が総理大臣に成る事があったら、たとえ野党に弾劾されても、日本中の長身女性の為に「ちっちゃめの女性」に対し、アフターコロナに於ける「消費税率引き上げ」の代案として、「ちっちゃめの女性税」を提言する事を誓います。
 まあ、天地がひっくり返っても私が総理大臣に成る事はないし、そんな税金取れる訳もありませんが、でも、希望は捨てないで下さい。
 そして来世では欧米に生まれて、存分にその美しいお姿で男性を魅了して下さいますよう。
 かしこ。
 
 
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