第93話 下痢にも歯痛にも効く「正○丸」こと、関西のおばちゃんも推す「正○丸」

文字数 1,730文字

 昨日折角買って来たローストポークだったのに、私はそれを冷凍庫に仕舞い込み後日食べる事にしたのである。
 代わりに昨夜大好物のラーメンを食べた私。
 何故そんな事をしたのかと言うと、悪魔的に美味しいそのラーメンを、つい私がテイクアウトしてしまったからなのだ。
 一度食べると病み付きになる味なのである。

 昨日ローストポークを買った帰りに、偶々その新宿のラーメン屋前を通り掛かった時の事。
 もう午後8時を過ぎていたので当然店は閉まっていると思いきや、何とテイクアウト営業をしていたのだ。
 しかも一杯ワンコイン500円と言う価格。
 店内で食べれば一杯1000円。
 買わない手はない。

 そうして昨夜そのテイクアウトのラーメンを食べるに到ったのであるが、予め皆様方に言っておかなければならない事がある。
 私はそのラーメンを食べると、必ずと言って良い程腹を下すのだ。
 しかしそれを承知で食べてしまうのが、悪魔のラーメンの悪魔たる所以なのである。
 とは言え決して食中毒の類いの物ではない。
 思うにそのラーメンの豚骨スープが私には合わないのだと思う。
 ラーメン通の後輩から言わせると、豚骨スープは物によって合わない人が居るのだそうだ。
 だからその後輩は豚骨スープのラーメンについては、どんなに好きであっても絶対毎日は食べないのだと言っていた。
 何でも彼も腹を下した経験が有るのだとか。
 しかし合う、合わないは別にして、滅茶苦茶に美味しいのである。
 そうなると食べたくなるのが人情と言う物。

 そこで必須アイテムが必要になる。
 ラッパのマークの整腸剤「正○丸」だ。
 私は下痢の際幼少の頃からその整腸剤を服用していて、効果は絶大であり且つ絶対的に信用出来るのである。
 で、あるからして、私は昨夜もラーメンを食べた後、「正○丸」を服用すべくオレンジ色の蓋を開けた。
 と、何とした事か、残りが1粒になっているではないか。
 結果私が今日の午前中、ずっと便器の上に座っていた事は言う迄も無い。
 午後に入り少し収まって来たので「正○丸」を購入すべく、新宿のドラッグストアへ。

 その往路の事である。
 私の自宅付近には愛煙家の住む家が有り、家主がまるで公共の喫煙スペースかのように表に灰皿を置き、このコロナ禍であると言うのに顎マスクで愛煙家同士話し合っているのだ。
 勿論辺りは副流煙で埋め尽くされている。
 私は煙草を吸わないので迷惑甚だしい。
 今日もそこを通過する際息を止めて走りながら通過したのだが、その刹那今は亡き父の事を思い出した。

 私の父は癌に冒されなかがらも煙草を止めなかったのだが、母が、「煙草は百害有って一利無しですよ」、と、煙草を止めるよう病床の父に促しても、「俺はその一利を楽しみたいんだよ」、と、言った事を思い出したのである。 
 父よりも20年以上遅れて鬼籍に入った母てあったが、あの世でも父の煙草を止めさす事は出来ていないだろう、と、今私は新宿から帰って来て、部屋の中でつくづくそう思っている。

 何故そんな風に思うのかと言うと、私も今日「正○丸」を買った復路、懲りもせずにまたぞろ悪魔の「あれ」を買ってしまったからだ。
 何を考えているのだろうか、私は。

 眼の前には悪魔のラーメンが一杯。

 しかし止められるものではない。
 父を始め世の煙草を止められない人達の気持ちは、私が腹を下してもこのラーメンを止められないのと、同じ気持ちなのかも知れない。
 さっき一口スープを啜ったがやはり美味い。
 大丈夫。
 今日の私には充分な量の「正○丸」が有る。

 と、ここで一つ。
 皆様方には悪魔のラーメンを始め腹を下しても食べてしまうご馳走が有るのなら、その場合是非共「正○丸」を服用する事をお薦めする。
 今日悪魔のラーメンの食後服用したら、あら不思議何とも無かったのである。
 ドラッグストアへ行き、「ラッパのマークの整腸剤」、と、言えば「正○丸」の正式名を教えてくれる筈である事を恐惶謹言させて戴く。
 ちなみに私が学生時代世話になった関西のおばちゃんも、大阪の製薬会社が提供するこの「正○丸」を、「あんたこれ呑んで、ほんで飴ちゃん舐めとき、ほな、お腹痛収まるよってに」、と、大絶賛だった。
 かしこ。
 
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