第18話 再会したプロの夜職お姉さんこと、熱帯魚に目覚めたお姉さん

文字数 1,235文字

 以前熱帯魚屋さんで飼ってもいない「仔猫のミィちゃん」を使って、連れの男性の下心を見事撃退したあの夜職お姉さんを、皆さん覚えておいでだろうか。 
 何と先週の平日の夕方、熱帯魚屋さんでその夜職お姉さんと再会を果たしたのである。
 再会と言っても夜職であろう事以外は名前さえ知らないお姉さんなのだが、私は平日の夕方に出向く事が多いので、再会を果たせたのは時間帯のせいなのかも知れない。
 マスク越しで顔こそ分からないが、そのマスクで分かる。
 何となればお姉さんのマスクのキラキラ度が、それはもう半端では無いのだ。
 以前と同じ超キラキラマスクであった。
 この間と違い完全私服なのだがギャル系の服だったし、あのお姉さんだと直ぐに分かった。
 またまた例のあのポッチャリ体型の男性と一緒なのかと思いきや、それらしき男性が店内に一人も居ないのである。
 今日はお姉さん一人で来てるのか?
 と、思っていたのだが、どうやらこの間とは違う男性同伴でのご来店のよう。
 世の中にはお姉さんの餌食になる男が、斯くも何人も居るのかと思いきや、全く私の想像とは違った。
 その黒いマスクをした男性の曰く。

「水槽とかお魚さんとか持っては行ったげるけど、あんたの部屋には行かないわよ。
 ったくこの女は。
 水槽やら器具の設置は自分でやるべきよ。
 そんな事も出来ないなら、お魚なんか飼うのは止めなさい!
 お魚が可哀想よ。
 第一女の部屋になんか入りたくもないわ。
 ったく」、と。

 ん?

 そうなのである。
 お姉さんはこの間のポッチャリさんとは違う「男」ではなく、黒いマスクの「お姉」を連れていたのだ。
 流石は新宿。
 ひょっとすると、「自分のお客」ではなく、
「自分がお客」の店の「お姉」なのかも。
 何やら熱帯魚を飼うにあたり、その「お姉」に水槽等を持って貰い、自身の部屋に器具類を設置するのを頼み込んでいた模様。
 で、結局はそこの熱帯魚屋さんの女性店員さんにお姉さんの部屋迄出張して貰い、それ等を設置してくれる事で万事解決。
 それにしても夜職お姉さんが熱帯魚を飼おうとしてるなんて、感心、感心、と、肯きながらその熱帯魚屋さんを後にした私であった。

 が、しかしその時、ふと思い付いた事があるのだ。
 もし熱帯魚にも「お姉」が居たら、同じ水槽にうちで飼ってる熱帯魚を2匹同時に飼えるのになあ、と、変な事を。
 私の飼っている熱帯魚はベタのハーフムーンと言う魚種なのだが、別名を闘魚と言って雄同士2匹を同じ水槽に入れると突っ付き合ってしまいボロボロになるのだ。
 それくらい縄張り意識が強いので、同じ水槽で2匹は同時に飼えないのである。
 一瞬その事を店員さんに訊いてみようかと思ったが、やはり止めにした。
 何故ならもし仮に「お姉」が居るのなら、店内に以下のように表示が有るからだ。

 ベタ(お姉)、と。

 今のところ、

 ベタ(雄♂)
 ベタ(雌♀) 

 の、表示しか見た事がない。 
 うーん。
 やはり「お姉」は人間特有のものなのだ。
 納得ぅ。
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