第77話 鼻出しに見えるマスクの男子こと、鼻がムズ痒い?男子

文字数 1,507文字

 昨日新宿へと向かう往路昼過ぎの事である。
 ニッカポッカを履いた男性が、横断歩道手前に設えられた花壇に腰掛けていた。
 恐らく付近の工事関係者であろう。
 私は彼を反射的に避ける事になった。
 何となれば鼻出しマスクをした上に、クシャミ迄していたからだ。
 やはりと言うか必然的にと言うか、辺りに人が寄り付いてはいなかった。

 思うに彼は花粉症なのではないか。
 花粉症の人に聴いた事がある。
 今日のように雨だと落ち着くらしいのだが、
この季節昨日のようにポカポカ陽気で雨が降っていないと、クシャミは止まらないらしい。
 良く無い事ではあるが暖かい季節を迎えるに付け、これから夏になる迄の間はそう言った人を益々見掛ける事になろう。
 マスクをしていてもクシャミは止まらないのだろうし、痒くて堪らない、と、言った処か。
 このコロナ禍に花粉症なのだ。
 本人も分かっているからこそ食事の休憩時間を1人で過ごし、なるべく廻りに迷惑を掛けないようにと花壇に腰掛けていたのだと思う。
 何とも悩ましい限りである。
 そう言えば今年の1月大学入試共通テストで鼻出しマスクを続けたせいで、失格になってしまった受験生が居た事は記憶に新しい。
 何か良い方法が有れば良いのだがこれと言った対応策も無く、暫くは苦しくてもマスクをきちんと着用するしかあるまい。
 ニッカポッカの男性に掛ける言葉と言えば、そんな事くらいしか思い付かない。

 と、暫く歩いた処で学生であろうか、10代後半〜20代前半と思しき数人の男女の集団と擦れ違った。
 その内の1人の男子がかなりな具合で口元に違和感があったのだが、ふと見るとパーティグッズとして売られている、「鼻や口元がプリントされたマスク」を着けていたのである。
 しかもそのせいで凄く分かり難かったのだが、良く良く見ると彼は実際に自身の鼻を出していたのだ。
 何たる事か。
 してみると鼻出しに見えるマスクを着用して、実際に鼻出しマスク行為をしていたのだ。
 つまり彼は鼻出しマスクを誤魔化す為に、敢えて鼻や口元がプリントされたマスクを着けていた事になる。
 言うなれば鼻出しマスクのカムフラージュ。
 確かにきちんとマスクをしていても鼻出しマスクにしていても、どちらにしてもマスクを着けていないようには見える。
 しかし言ってみれば芸人の「とにかく明るい安村」のように、「安心して下さい、履いてますよ」、ならぬ、「安心して下さい、着けてますよ」、と、言う為のマスクではないのか。 
 ググッてみると商品名は、「おもしろ口マスク」であるとか、「変顔マスク」、と、なっていたし、断じて鼻出しマスクではない。

 今後は「鼻出しマスクの為にはご利用をお控え下さい」、とか、「このマスクは鼻出しマスクの為のマスクではありません」、とか、メーカーに添え書きを加えて貰えるように進言しなくてはなるまい。
 とは言え花粉症とコロナ両方の敵と闘っている人達に取っては、この季節こう言った問題は深刻な問題だと言えよう。 
 否、花粉症ならずとも、マスク着用が常態となった今、総ての人にそう言える事なのかも知れない。
 ところがマスク着用以外に出来る事が無いのが現状である。
 出来る事と言えば今後イスラエルのように、我が国でも国民へのコロナワクチン接種率が向上するよう祈念するくらいの事か。

 ここで一つ。
 これからの季節マスク着用は辛い時もあるかも知れないが、皆様方には自身の為にきちんとマスクを着用するよう、また周りから見て鼻出しマスクがバレないように工作してもそれは無意味なのだ、と、恐惶謹言させて戴く。
 鼻出しマスクは所詮鼻出しマスクに過ぎないのだから。
 かしこ。

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み