第63話 お洒落トートの女性こと、関西人の女性

文字数 1,488文字

 今日遅めの昼を戴こうと新宿副都心へ。
 私のような貧乏人からすると、ゆったりとした席での外食は月に1度の贅沢である。
 日曜ともなればビジネス客は疎か、家族連れさえいないのが新宿副都心の良い処。
 その上コロナ禍で緊急事態宣言中と来たら
、開いている店は限られる。
 故に何時ものちょい高級な大手外食チェーンの店へと出向いたのだが、注文した料理が届く迄手持ち無沙汰にスマホを弄っていたのだ。
 すると何処からともなく、関西弁を話す女性の声が聴こえて来るではないか。
 
 どうやら右隣の席に座っている20代と思しき女性3人組のようなのだが、1人だけが関西弁なのだ。
 俯いていたので誰が関西弁を喋っていたのかは分からなかったが、ちらと持ち物を見れば誰が関西人なのかは一目瞭然。
 私は思わずほくそ笑んだ。
 と、言うのも、一人が「DEAN&DELUCA」のトートバッグを、一人が手提げの部分にIとアルファベットを切り抜いたようなマークのトートバッグを、そして私が関西人と特定した女性は、豹柄のトートバッグを横に置いていたのである。
 何と分かり易い事か。
 と、思った直後、予期せぬ事が起こり私は瞠目を禁じ得なかった。
 そうなのである。
 豹柄のトートバッグの女性が標準語で話し、手提げの部分にIとアルファベットを切り抜いたようなマークのトートバッグの女性が、関西弁で話していたのだ。
 無論3人共マスク越しではあるが、中でも一番可愛い感じのお洒落女子が関西人だったのである。
 うーん、以外。
 
 せっかくなので以下に3人の話を要約する。

 関西人の女性はコロナ禍ではあるが、姉の出産の為急遽女手が必要になり地元へ。
 関西では緊急事態宣言が解除されており、関東よりは人の出入りが緩いのだそうだ。
 飛行機で移動したとか。
 地元は兵庫なのだが例によって兵庫ではなく「神戸」、と、主張。
 で、3人は女子大時代の同期で、3人だとギリギリ多人数での会食ではないのだそうだ。
 ま、実際そうではある。
 また住まいはこちらで、3人共東京で働いているらしい。
 今回は関西人の女性が招集したらしく、手土産を渡したいのと久し振りに3人で会いたかったようで、彼女のトートバッグと同じトートバッグを関西で他の二人にも買って来たらしい。
 後でググってみて分かったのだが、手提げの部分にIとアルファベットを切り抜いたようなマークのトートバッグは、「イアクッチ」、と、言うブランドだった。
 凄くお洒落なバッグで、関西では滅茶苦茶人気が有るらしい。
 あちらでは既に有名百貨店にショップが出店されており、関東はまだまだこれからの模様。
 その「イアクッチ」のバイヤーさんが、どうやら関西から先に仕掛けたらしい。
 道理でIのアルファベットだけでは、ピンと来ない筈だ。

 それと私が関西人と思っていた女性のトートバッグは「豹柄」とは言わないらしく、「レオパード」、と、言うのだそうだ。
 良く見ると関西のおばちゃんの「豹柄」とは趣が異なる。
 私とした事が「イアクッチ」も「レオパード」も知らなかったとは、何とも情けない。
 それより何よりマスク越しで顔は分からないものの、その関西人の女性の可愛い事。
 彼女の曰く。
「ほんまびっくりしたわ」、とか、「むっちゃ可愛ぃ」、とか、私のイメージとは異なる愛らしい関西人女性だった。
 彼氏が羨ましい。

 と、しかし、ここでその可愛い可愛い関西人女性の、誰かは知らないが彼氏に対して言いたい事がある。
 そんなに可愛い彼女でも、「お好み焼き定食」は食べるでしょうよ、と。  
 私からはそのように恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
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