第88話 ちっちゃ可愛い3人組女子こと、女性1人と女子2人の3人組

文字数 1,426文字

 今日の夕方新宿の街を歩いていると、20代と思しき3人組女子が私の直ぐ前を歩いていたのだが、3人共「ちっちゃめ」で且つパンツ姿なのである。
 こんな例外も有ったのか、と、私はその3人を発見した時面食らってしまい、一瞬立ち止まる程であった。

 今迄研究に研究を重ねて来た3人組「女性」の真ん中の「女性」が、ロングスカートかパンツだと言う持論が間違ってはいないものの、3人共パンツなのだから真ん中も端っこも無い。
 後確かめたいのは真ん中の女子が調整役である、と、言う持論の正否。
 確認すべく3人組女子の後を付ける意思を固めた、その刹那の事である。
 ふいに3人組女子が直ぐ横のカラオケ店の中に入って行った。
 こっちは1人である。
 1人カラオケと言う手もあるが、そこ迄する時間の余裕とて無い。
 致し方無くその場を後に。

 それから2時間くらい経っただろうか。
 用事を済ませた私は復路の途に就いた。
 と、先程のカラオケ店の前を通り掛かると、見覚えのある3人組女子が、調度店から出て来ようとしている処に出会したのである。
 良く見るとペアルックならぬトリオルック。
 3人が3人共に色の違う、同じデザインのハーフコートを着ていたのだ。
 ベージュに、ブルーに、薄いピンク、と。
 店を一歩出た処で話し始めた3人組女子。
 3人共マスク越しにも目許が美しい。

 私はこの僥倖を神に感謝すると共にスマホを弄るふりで立ち止まり、3人組女子の会話に耳を澄ませた。 
 何とかして誰が調整役かを確かめたかったのである。
 と、真ん中の女子が口を開いた。

「今日晩御飯何にする?
 早くしないとお店閉まっちゃうよ」、と。

 やはり真ん中の女子が調整役であったか。
 私は持論が正しかった、と、確信すると同時に、真ん中の女子の声に若干違和感を覚えた。
 すると向かって右端の女子が答えた。

「私何でもいいよ。
 ママとお姉ちゃんに合わせる」、と。

 ん?
 ママとお姉ちゃん?
 と、言う事は、母娘だったかと私が思うよりも早く、真ん中の女子がマスクを着け直した。
 チラと見れば綺麗な顔こそしていたが、やはり彼女は「女子」でなく「女性」だった。
 見ようによっては20代に見えるが、若く見える40代〜50代と言われればそう。
 何より声が20代ではない。
 しかし黙っていて尚且つ向かって右端の女子が、「ママ」、と、さえ呼んでいなければ、「3人組姉妹」である。
 と、呆然とその場に立ち尽くす私を尻目に、悠然と去って行った「3人組姉妹」ならぬ「3人組母娘」であった。 
 してみると真ん中の人がパンツかロングスカートで調整役、と、言う私の持論は、「3人組女性」と「3人組お姉」だけではなく、「3人組母娘」にも通用すると言う事になる。

 しかしそれにしても、あれ程「ちっちゃ可愛い」お母さんから産まれた2人の娘なのだ。
 マスク越しで目許しか見えなかったが、顔全体も美形で「ちっちゃ可愛い」事は確実。
 何と言っても遺伝子がそうさせるのは自明。
 そうだとすると何ともご主人が羨ましい。
 3人の美女に囲まれて生活出来るのだから。
 とも思ったが、やはり思い直した。
 何となればその場に居ないと言う事は、ご主人は母娘のカラオケ&会食から退け物にされているからだ。
 果たしてご主人は幸せなのか?

 と、ここで一つ。
 もし1人で食事をしているのなら独り者の私からご主人に、独りで食事をしているのは貴方だけではないのだ、と、恐惶謹言させて戴く。
 かしこ。
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